寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

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私立大6割で収支改善 主要129大学の2012年度決算

昨日訪問したある学校法人さんで、興味深い記事を教えていただきました。

日経新聞より。先日の連休中の記事です。


私立大6割で収支改善 主要129大学の2012年度決算


この統計は、国立大に関しては全数が調査対象ですが、私大については学生数1万人超などの条件付きで集計された主要43大学が対象となっていますので、まずは「私大すべての傾向ではない」ということに留意が必要です。

が、それにしても「6割で収支改善」というのは驚くべきことで、何があったのか…と記事を読み進めると、そのからくりは会計基準の変更にありました。

というのも、2011年度における大学法人の決算処理において、以下の文科省通知によって収支差額が悪化した大学が少なからずあったのです。


退職給与引当金の計上等に係る会計方針の統一について(通知)

1 統一の内容等

(1)退職給与引当金の計上基準

(中略)

1)各学校法人の退職給与規程等に基づいて算出した退職金の期末要支給額の100パーセントを退職給与引当金として計上すること。(以下略)

2 経過措置

退職給与引当金の計上に係る変更時差異については、平成23年度において一括計上することが困難な場合には、10年以内の期間をもって計上することができることとする。(以下略)

3 適用                                 

この通知による取扱いは、平成23年度の計算書類の作成から適用すること。(以下略)


つまり、今回の記事が対象としている2012年度決算は、前年度に行われた上記会計処理が解消され、通常年の決算内容に戻った、という特殊事情があることを織り込まねばなりません。

そして、収支差額が悪化した大学の要因として

・寄付金の減少

・校舎の新設改修

が挙げられており、私学が直面する課題が浮き彫りになったとも言えます。


ちなみに国公立はどうかと言えば、決算内容は苦戦の様子。

全体の約7割が利益ベースで悪化しています。

この要因として「付属病院の再開発」が挙がっており、やはり施設整備に相当の費用がかかることが推し量られます。


記事の終盤には「地方私立は苦戦」との中見出しで、このような内容が記載されていました(筆者による要約)。

・今後の課題の一つは「少子化による学生数減少への対応」

帝国データバンクが在学者数が1万人を下回る大学も含めて私立452大学の11年度決算を分析したところ、ほぼ半数の227大学が10年度比で減収。特に地方の私立大学の苦戦が目立ったという。

・教育サービスの質向上を図りつつ、安定した収益を出すことが従来以上に大学経営に求められている

・独自色をアピールして学生を呼び込み、授業料収入を増やすなど経営安定化の取り組みが不可欠


決算書、というのは事業体にとっての「通信簿」「成績表」である、というのが私の考えです。

学生が受け取る通信簿のように、それがすべてではないけれど、活動の成果を示すものとして非常に重要なものではないだろうか、と。

そしてその通信簿を活用するもしないも本人次第。

決算は「処理」することに意義がある、というのが実務の大半になっていますが、膨大な作業を経ているにもかかわらずその結果を活用しないのはいかにももったいない、と私は思います。


どこにどんな問題が潜んでいるのか、そしてそれをどうすれば改善できるのか…

決算書にはヒントがいっぱい書かれています。

決算内容を吟味して、未来のことを検討するきっかけにしていただければと願っています。


(文責:吉田)