寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

オンライン教育、理想と現実

非常に古い記事なのですが、このタイミングで見つけてしまいましたので本日のブログに書かせていただきます。

グロービス知見録」に、今年3月(!)に掲載された記事です。

 

オンライン教育、理想と現実 | GLOBIS 知見録

 

グロービス経営大学院はその名の通り経営を学ぶための教育機関。

そのグロービスが提供しているこの「グロービス知見録」は、経営に関するナレッジライブラリと位置付けられているようで、いろいろな記事が掲載されています。

その中で、『「教育×IT」の未来予想図』と表題を付されたシリーズ記事が連載されており、その中のひとつが本日リンクを張った記事です。

 

このブログをお読みの方であれば、MOOCの存在はすでにご存じでしょう。

MOOCとは「Massive Open Online Courses」、日本語では「大規模オープン・オンライン・コース」。

その名の通り、インターネットを通じて全世界に開かれた講義形態で学習を行う方式を指しています。

そのMOOCが顕在化させたオンライン教育の限界について、この記事は指摘しています。

 

それは「修了率の低さ」。

記事にはこう書かれています。

MOOCは単に映像を受け身で視聴するだけではありません。途中にテストが入ったり、視聴期限が決まっていたり、ディスカッションボードがあるなど多くの工夫がこらされています。学生を飽きさせることがないように「あの手この手」の仕掛けがあるのです。

しかし、その仕掛けがあったとしても、100人受講した場合、その途中でクラスから抜け出してしまうのは90名強。通学型で考えるならば、学級崩壊レベルです。これは正しい学校のあり方と言えるのでしょうか。

双方向性、基礎からの丁寧な指導…様々な工夫を凝らし、コンテンツとしては高い評価を受けている講義ですら、途中離脱率が9割にも上る現実。

なぜこれほどまでに修了率が低いのか、その要因についてもこの記事は丁寧に解説してくれています。

学習者は、どういう時に学習に意欲的に取り組み、かつ持続的にその意欲を維持できるのでしょうか?そこには5つの条件があると考えます。

1つ目は、学習内容に対して学習者が本当に必要を感じている、という「必要性」
2つ目は、学習内容のレベルが学習者にフィットしている、という「適切性」
3つ目は、学習の過程で成長実感を得ることができる、という「成長感」
4つ目は、学習の過程で他者との競争意識や協働(コラボレーション)意識を感じる、という「競争・協働感」
5つ目は、学習内容やペースを自分で決められる、という「自律性」

この5つの条件が「学習コンテンツ」にバランスよく組み合わさることにより、人は学ぶことを「楽しい!」「面白い!」と感じ、結果的に意欲的に学習に取り組むことができるのです。

記事は続きます。 

どれだけコンテンツが良くても、この条件を自分で整えることができない大多数の人は当たり前のようにドロップしていきます。目的意識もないままに何となく面白そうだからログインしてみた人、必要性は感じていたけど適切なコンテンツに辿り着けずに誤ったコンテンツを視聴してしまった人などなど・・・。手間のかかる「条件整備」をほぼセルフサービス化したからこそ、MOOCは地域のカベを超えたグローバルサービスになりましたが、それがゆえに大量に登録し、大量に離脱していくという課題に直面しているわけです。

このように見てくると、古来から存在する「学校」という場は人を育てる場として何と適切な場であるかということが逆説的に理解できます。

なぜなら、上記5つの観点、すなわち「必要性」「適切性」「成長感」「競争・協働感」「自律性」が、目の前で繰り広げられるコミュニケーションによって、必要かつ十分に支援され得るからです。

もちろん、そのために存在するのが教職員、というわけです。

 

ただ一方で、学校でありながらこの5つの観点が十分に支援されていないケースも世の中に存在するのもまた事実です。

自校の教育環境がどうであるのか、という点をチェックするのに、この5つの観点はぜひとも活用すべきではないでしょうか。

 

自校の生徒は、学習内容に対して必要を感じているだろうか?

自校のカリキュラムは、学習内容のレベルが個々の生徒にフィットしているだろうか?

自校では、学習の過程で成長実感を得てもらうための工夫がなされているだろうか?

自校では、学習の過程で他者との競争や協働意識を感じられるだろうか?

自校では、学習内容やペースへの配慮がなされているだろうか?

 

教育環境は変わり、方法論は常により良くあるべきです。

学校がいつまでもその中心にいることを、少なくとも私自身は期待し、希望しています。

 

最後に、今回ご紹介した記事の末尾付近にあった内容を引用しておきます。

これらの「条件整備」に関する課題は、課題として顕在化されたからこそ、ビジネスチャンスとして改めて認識されつつあるのも事実です。現在オンライン教育で広がっているサービスは、この条件整備の課題を様々なアプローチで解消し、受講者の集中力、エンゲージメントを高めようとしています。

課題が見つかれば次の成長があることを、MOOC同様、学校も忘れてはなりません。