私立大学の生きる道は、というテーマの寄稿文とお見受けしました。
日経新聞より。
(会員限定記事となっております。ご了承ください)
この記事は、北陸大学の山本啓一教授によるものです。
大学進学率の上昇、すなわち人材の高学歴化が
地方の企業や組織を変え、新たな付加価値を生んだとおっしゃっています。

上の図表でも明らかなとおり、日本の大学進学率は1990年以降上昇を続け、
2023年には57.7%に達しました。
この事実については
「学力が低い学生が進学する意味はない」
といった批判的な見解が多い一方で、18歳人口の急減により、
定員割れの私立大学の割合は53.3%。
「無駄な大学が多すぎる」「低偏差値の大学はつぶせばよい」
という意見も珍しくない、と筆者は指摘しています。
定員割れが顕著な地方の中小私立大学の役割は何か。
筆者は「地方経済を現場で支える人材の輩出」と応えています。
実際、山本教授は以前に勤務していた九州国際大学で、
定員割れによる全入状態となったことで、
目的意識が希薄で学力不足の学生が多く入学し、
自身と大学教育のミスマッチを解消できず多くの中退者が発生し、
就職氷河期の深刻化で成績優秀なのに未内定のまま卒業する学生もいるなど、
「課題先進大学」だったところを、
教育内容を変えることで改善したご経験をお持ちのようです。
筆者は「新たな学生層には新たな教育が必要」と考え、北九州市の地元商店街と連携して課題発見・解決型授業に取り組んだ。08年に学部長に就任してからは教員・職員が協働して組織的な教育改革を進め、アクティブラーニング中心の初年次教育の導入や社会で求められる汎用的スキルを育成するカリキュラム改革を進めた。
これらの結果、学生の力は確実に向上した。入学者数も増加し、中退率は低下した。
教育の成果は卒業後の働き方にも影響を与えた。進学率上昇の中で以前は高卒者が多数を占める企業に就職した学生は珍しくなかった。例えばスーパーマーケットである。
大学時代に地域連携活動を通して課題発見・解決に取り組んだ経験を持つある卒業生は「精肉売り場でお客やパートさんの声を参考に肉のパックの作り方の工夫を重ねていくと、売り上げ面で先輩をしのぐ結果を出せるのが面白い」と話していた。
別の学生は生活協同組合系のスーパーに就職し、配送先の顧客の声に耳を傾けているうちに勤務先の社会的意義を意識するようになり、その思いを新人の採用活動に生かしていると語ってくれた。
少子化の中で、入学者数をいかに確保するか、という点に
経営課題が焦点化されることも多くなっていることでしょう。
近時は「無償化」の流れがあるからか、
経済的なメリットを前面に打ち出しての募集活動が
再び活性化しているような印象も持っています。
しかしながら、本来その学校に行きたいと思ってもらうためには、
家計の面で何とかなることはひとつの重要な要件ではあるものの、
その学校で何が学べるのか、どう成長できるのかが
最重要であることにおそらく異論はないでしょう。
教育機関は教育内容を整えてこそ、選ばれる学校になれるはずです。
私学に勤務する山本教授ご自身が以下のように述べておられることは、
今後の私学のあるべき姿を語る言葉としてとても力強く感じられます。
皆様はどのように思われますか。
高等教育の修学支援新制度の該当者数や奨学金受給率などの状況から、中堅層は他県の大学に進学する経済的余裕がない家庭が多いと推察される。地方中小私大が淘汰されることは中堅層の教育機会がその地方から失われることを意味する。地方企業などへの人材輩出が途絶えることにもつながり、弊害は大きい。
生き残りのため公立化を目指す私大も増えた。過去に公立化した大学をみると、学生募集状況は大幅に改善するものの入学者の県内出身者率や県内就職率は低下している。公立化によって地方企業などへの人材輩出機能が弱体化するなら、地域にとって望ましい解決策とはいえまい。
地方中小私大の存続のため自治体の財政支援も検討されてよい。ただし、それには一層の教育改革が不可欠だ。これからは課題解決力にしても、専門知やデータサイエンスに裏打ちされた確かな力であることが求められる。
(文責:吉田)