なぜ赤字がいけないことなのか、という点にもぜひ着眼してみて下さい。
日経新聞より。
(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)
私立大学の経営改革が行き詰まっている。全国600校以上ある私大の運営法人の4分の1が慢性的な経常赤字に陥っていることが明らかになった。大学が増える中で少子化が急進し、赤字校の7割は学生を計画通りに獲得できていない。デジタル化など時代の変化に対応する教育の実現には大学の安定した財務と適切な投資が欠かせず、再編も視野に入れた対策が急務となる。
今回の記事は、日本経済新聞が
全国572学校法人(616校)の決算情報を
ホームページから集計した結果です。
私大の財務情報は既にインターネットで
公開することが義務づけられていますので、
こういった情報収集や分析が可能な状態です。
記事によりますと、
2018~20年度の経常収支が3年連続赤字だったのは139法人。
15法人は負債が運用資産を超過していた、とのことで、
学生の定員充足率が低迷し、収入が落ち込むケースが目立っているようです。
下のグラフを観ますと、単年度の赤字も含めれば
半数近くに上っていることが分かります。
千葉県内の学生3000人規模の私大を運営する学校法人の場合、20年度の収入約100億円に対し、支出は約120億円。定員充足率は7割だが抜本的な改革に距離を置く。同法人の理事長は「赤字であっても、教員を減らしすぎて学問の本質を見失った大学よりいい」と主張する。
上の文章をお読みになって、どうお感じになるでしょうか。
学問の本質を見失うことはあってはならないと思いますが、
赤字も同じくらい、あってはならないことだと私は感じます。
なぜなら、赤字が続けば教育活動や施設設備への投資ができず、
さらに深刻化すれば運営資金が底をつき、
私学の経営が永続できなくなってしまいます。
つまり、学問の本質を見失うどころか、
学問の場を永久に失ってしまうのです。
本質を損ねるならなくなってしまったほうがまし、
というふうに考えることに対しては、
そこに投入されている公金への配慮、
そして社会的存在である私学がなくなってしまうことへの想像力が
あまりに欠けていると言わざるを得ないでしょう。
さて今後に向けて、経営環境は厳しさを増していきます。
日本の18歳人口は今後も10年ごとに10万人以上のペースで減少する見通し。収支バランスの健全化は各大学の対応だけでは追いつかない公算が大きい。官学が連携して高等教育の枠組みを再構築していく必要がある。
新たな教育内容の実現のための資金の必要性が高まる中、
建学の精神を念頭に置きつつ、
教育活動を永続していくためにはどうすればいいのでしょうか。
記事にはこんな事例が紹介されています。
改善のカギは学部再編など身を切る努力だ。文部科学省も経営の専門家の派遣など指導強化に乗り出した。就実学園(岡山市)の西井泰彦理事長は「他大学との授業の共有などはすぐにできる」と話す。青森県では柴田学園大学や弘前大学が消耗品を共同調達している。
今回の記事は私大に関するものですが、
経営状況が厳しいのは学校種に限らず、
私学であれば該当するケースが多いでしょう。
生徒数を確保することが至上命題ですが、
上記記事のように固定費の削減も経営改善の要素のひとつです。
ちなみに、この記事には下の一覧表も付けられていました。
こうやって固有名詞が全国紙に出てしまう世の中であることを肝に銘じ、
教育活動収支の赤字が続いている学校法人におかれましては、
収支構造の改善、赤字体質の脱却に向けた施策を
早急に企画、実行されることをお願いいたします。
(文責:吉田)