寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

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高校の文・理コース分け 労働生産性低迷の要因に

働き方改革の大前提は「労働生産性向上」。

しかし、その課題にはこんな要因があったという指摘です。

日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

村田治・関西学院大学長は、国際学力テストの数学の成績と国の経済成長率や生産性は正の相関関係にあるのに、数学の成績がトップクラスの日本が当てはまらないのは、高校の2、3年で文系・理系に分かれ、数学の学習をやめる生徒が多いからだと指摘する。

 

上の文章を読むだけで、なるほどなあ、と思わされます。

私は文系でしたが、私立文系の受験者は軒並み

数学の履修がなくなっていたことをおぼろげながら思い出します。

 

この記事で紹介されているいくつかのエビデンスによりますと、

・国際学力テストの数学スコアと経済成長率等の間には

 正の相関関係が観察されるとの研究成果がある

・日本の数学の学力はOECD加盟国でトップクラスにありながら、

 近年の労働生産性労働生産性成長率は下位に低迷する

という事実が浮かび上がっています。

確かに、記事に掲載された下の図を見ると、

日本が全体の傾向からやや外れた位置にプロットされているのが

見て取れますね。

 

 

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このようなことがなぜ起こるか。

その原因が文理選択にある、と筆者は指摘します。

 

多くの高校は早ければ2年生、遅くとも3年生になると文系と理系にコースを分ける。13年3月の国立教育政策研究所「中学校・高等学校における理系選択に関する研究最終報告書」によると、高校3年生全体に占める理系コースの比率は約22%である。

(中略)

高校1年生段階まではOECD加盟国でトップクラスの数学リテラシーを誇っていたわが国の高校生は、その後、文系と理系のコース分けによって、80%近くが数学を学ばなくなってしまう。このため、十分な数学リテラシーを伴った人的資本の蓄積が進まず、わが国経済において技術進歩やイノベーションが起こりにくく労働生産性上昇率が鈍化していると推察される。

 

自分の高校時代を再び思い出しますと、

数学は得意と苦手がはっきりする教科の代表格で、

好きなら伸びるし、嫌いになると足を引っ張られてしまう、

場合によってはそのことが他教科にも影響する、

といった性格を持つ科目だったような気がします。

 

筆者の提案はこうです。

一刻も早く、高校段階での理系と文系のコース別編成を止め、全ての生徒が数学3まで学べようにすべきだと考える。さらに、AIの理解に必要な微分が数学3の範囲であることを考慮すると、現在の高校段階での文理の区別を止めることは喫緊の課題である。そのためには、初等・中等教育段階から数学それ自体の面白さを生徒に伝える工夫も必要となる。

 

今後の進展が大いに期待される、

データサイエンスや人工知能(AI)の世界においては、

数学の素養が欠かせません。

少なくとも高校までであれば「面白い数学」を実現することは

十分可能な気もしますので、

特に私学においては将来を見据えた科目選択、

そして授業の改善を進めていただければと思います。

 

(文責:吉田)

 

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