首都圏の私大を中心に、近時定員管理が厳格化され、
入試が難化したとの話題はすでにお聞き及びでしょう。
一方で、一点刻み入試は避けるべし、との方向性も
打ち出されている現状は矛盾している、
との指摘が紙上でなされております。
日経新聞より。
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中央教育審議会は2014年12月22日付の「高大接続答申」で、「知識の再生を一点刻みで問う」大学入試からの脱却を主要な柱として打ち出した。「知識の再生」という日本語の使い方には違和感を覚えるものの、理念自体は決して間違っているわけではない。
一方、文部科学省は三大都市圏への学生集中を是正するため、ここ数年、大学の入学定員管理の厳格化を進めている。国立・私立の別や規模によって数字は若干異なるが、たとえば定員8千人以上の私立大学の場合、18年度は原則、入学者が1.1倍を超える学部については助成金が不交付となる。19年度以降は1.0倍を超えた分の学生経費相当額を減額する一方、0.95倍以上1.0倍以下の場合は助成金を上乗せする方針だったが、今年度は当面、上乗せ(インセンティブ方式)のみの実施となった。
大学に限らず、入学定員、収容定員が規定される各校園においては、
教員の配置基準や面積基準等により、
定員を厳格に守ることが求められることはやむを得ないでしょう。
これまで大学においてその基準に対する運用が緩かったことについては
確かに是正が必要である、とも感じます。
ただ、そうなると「誰を入学させ、誰を入学させないか」という基準も
当然厳格にならざるを得ません。
そして、そこに明確な根拠も必要になるでしょう。
これこそが、1点刻み入試の根底に存在する考え方である、
とこの記事の筆者は指摘しています。確かにそうですね。
だからもし本当に点数至上主義からの脱却を目指すのであれば、大学の入学定員を大幅に弾力化しなければならない。ところが前述した通り、事態は真逆の方向に進んでいる。同じ文科省の管轄事項であるにもかかわらず、一方で一点刻みの入試は良くないと言い、他方で入学定員を厳密に守れと言う。根本的な矛盾としか言いようがない。
何かを点数化する、ということには大きな危険が伴います。
それは、単にそのジャンルでの優劣を競うだけのものであるはずなのに、
まるで人間性そのものを序列化するもののように扱われることすらあります。
そんなリスクはすでに現代社会でも顕在化しているはずですが、
反省を活かすような制度はなかなか構築されずにいます。
私学の場合には特に、各校園における定員管理に気を遣われていることと思います。
貴校園の理念に沿った入学試験のあり方を模索していただければと願っております。
(文責:吉田)