寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

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私立中学・高校の連携 優れた社会人を教員に

私学同士の連携の必要性を強く感じている私にとって、

とても興味深い記事がありました。

日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(会員限定記事となっております。ご了承ください)


この記事は、神奈川県私立中学高等学校協会・

工藤誠一理事長からの寄稿です。

神奈川県私立中学高等学校協会には県内82校の私立校が加盟、

工藤氏は「個の独立と群の創造」を掲げていらっしゃいます。

 

個の独立とは各校が個性と独立性を大切にすること。

これはどの私学であっても留意されていることでしょう。

 

一方、今回の記事の中心は後者、「群の創造」のほうの施策です。

工藤氏は

「いま、私学はそれぞれの強みを生かしつつ協力し、

 共に成長することが求められている。

 独立して教育の質を高めるだけでなく、

 他校との連携を通じて新しい価値や知見を創造することが

 私学教育の未来を切り開くカギだと信じる」

とおっしゃいますが、私もその通りだと感じています。

 

そして記事には具体的な取組みとして、

まず「神奈川私学修学支援センター」の開設が挙げられています。

 

これは、加盟校に在籍する不登校生の、

学校復帰に向けた支援を行うことを目的とする機関で、

・個別指導を行う「学習支援」

臨床心理士がカウンセリングを行う「心のケア」

・生徒自身の「居場所づくり」

の3つが活動の柱になっているそうです。

それぞれの学校で不登校生は一定数存在するとはいえ、

各校別では十分な対応が難しいところもあるかもしれません。

まさに私学の連携が重要かつ効果的な場面と言えるでしょう。

 

ちなみに、課題とされた経費の確保については、

県の補助金と保険代理店業務の収益を充てていらっしゃるようです。

こういったしくみも参考になりそうですね。

 

そしてもう一つの連携は、「特別教員募集枠」の設定です。

 

 

対象となる人材は2種類。

1つは教員免許を取得済みか取得見込みの大学3年生もしくは大学院生。

こちらについては通常ルートで教員を目指す学生と大きく変わりないと

感じますが、私学への就職希望者を直接獲得できるしくみとしては

有効かもしれません。

 

そして私が注目したのはもう1つのほう。それは社会人採用です。

 

以前より、このブログでも申し上げてきておりますが、

一般の社会人として活動している方々の中には、

学校教員という職業を希望されるケースはそれなりにあり、

そしてそういった人材に学校教育の中で活躍していただくことは、

単なる人手不足の埋め合わせをはるかに超えて、

学校教育がより多様で、実社会を踏まえたものになっていくことが

期待されると思うのです。

 

この協会では、希望者を募って勤務校を紹介することに加え、

特別免許の取得も支援されているそうです。

以下、とても大切な考え方だと感じましたので、

少々長くなりますが、記事本文を引用させていただきます。

 

教員不足を乗り切るには教職課程による教員養成だけでなく、特別免許状の活用が有効だ。文部科学省は授与の要件を大幅に緩和して多面的に人材を発掘しようとしている。しかし、都道府県教育委員会が裁量的な判断で授与に難色を示すなど、制度の運用にはばらつきがある。

例えば、授与の条件の一つである「教科に関する専門的知識経験・技能」の捉え方だ。文科省は教科の内容を完全にカバーしていなくても、自身の専門分野を中核として当該教科の知識があれば授与できるとしている。

実際には教科内容の一部しか該当しないことを理由に授与しないことがある。理学部物理学科の学生が教職課程を履修していると理科の免許を取得できるが、未履修だと「生物・化学などについて学んでない」という理由で授与を拒まれるケースがある。

確かに教職課程には専門以外の分野を学ぶ科目がある。だがそれで、どれだけ他分野の教育方法などを習得できるだろう。大したことはない、というのが実態ではないか。

そもそも私学の多くは中高一貫校だ。中高一貫校では教科の教育方法より教科そのものを知る教員が求められる。つまり、学部や大学院で数学、物理、化学、地理といった専門の学問をしっかり身につけた人材だ。

専門の学問に打ち込んでいる学生には教職課程で数十単位を取り、教員免許を取得する時間的ゆとりがない。だが、そうした若者にこそ教師を目指してほしい。学校改革の担い手として一時期、民間人校長がもてはやされたが大事なのは「民間人先生」である。

 

私学は常に競争にさらされている、とは思いますが、

だからといって、自校園だけが繁栄すればいい、

という考え方は歴史も証明している通り、決して成り立たないものです。

工藤氏は

「すべての私学が目指すべき最終的な目標は生徒に質の高い教育を提供することだ」

「どこかが一人勝ちするのではなく、互いに高め合わなくてはならない」

とおっしゃいます。本当にその通りだと思います。

 

今後の取組とその成果に大いに期待したいと思います。

そしてぜひ、貴校園が属する私学の団体でも、

同様の取組が始まり、進展していくことを願っております。

 

(文責:吉田)

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