高校生やその保護者にとって大きな関心事のひとつに将来の進路が挙げられるでしょう。教職員の方々も生徒の進路指導には大変なご苦労をされていることと思います。
これまでの常識や考え方が通用しない時代を迎えている中での進路指導は特に大変なものでしょう。
本日は、リクルート進学総研が公表した「高校の進路指導・キャリア教育の現状に関する調査結果」の一部をご紹介いたします。
この調査によると、「高校における進路指導の難しさについて、「難しい」と感じている進路指導主事の割合は91.9%に上り、前回調査(2014年)の90.0%から高止まりとなった」としています。
それでは、進路指導を困難だと感じている要因は何でしょうか。上位3つは以下のとおりです。
1位.入試の多様化(25.7%)
- 学習指導要領、入試制度が変わっていくことにより、新たな制度、取り組みを追加していく必要があり、個々の生徒への学習・進路指導などを十分に実施するためにの時間減少につながる。
- 大量の情報の中から、生徒にとって有利になるものを選択するのが困難。学校によって入試が異なるため、ケースごとに対応する必要がある。
- 高大接続改革の号令のとともに、ここ数年の学部改組や入試制度はとても教師が把握できるものではない。
2位.教員が進路指導を行うための時間の不足(25.6%)
- 教科指導、HR指導、部活指導に多くの時間をとられる。
- 近年授業の進め方(アクティブラーニング型)で時間が取られ進路対策が後手に回る。
- 英語の4技能重視や記述式入試の導入の為の国語の授業・指導方法の変更などの対応に時間がかかる。
3位.進路選択・決定能力の不足(24.1%)
- 「行きたい学校」ではなく、「行ける学校」を志望する安全志向が強くなっていること。
- 高卒後の幅広い進路選択において、自分の意志で決めきれなく、保護者や教員に頼る傾向が強い。
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教育現場が大きな転換期を迎えようとしている状況下で、上に挙げた理由はどれもそのとおりでしょう。大量の情報を収集し理解する必要があるだけでなく、様々なことへの対応にも追われ、教員の方々には大きな負担が掛かっていることは間違いないと思われます。
とはいえ、それを理由に生徒への進路指導を十分に行うことができないというのは、生徒にとってはたまったものではありません。
また、同じ学校でも教員によって保有する情報量が異なることによって、進路指導の内容にバラツキが生じてしまうようなことがあってはいけません。進路指導に関する情報に限ったことではありませんが、学校内の全ての教員に同じ情報が共有されていることは最低限必要です。
例えば、教員が個々に進路指導に関連する情報を取りに行くような状態であれば、教員によって保有する情報量には間違いなくバラツキが生じますし、何より全員が同じ情報を探しに行くというとんでもない非効率が生じます。
学校組織はフラットでマトリックス的な組織であることが大きな特徴ですが、一般企業のようなピラミッド型組織と比較すると情報共有という点では迅速性や確実性に劣ると考えられます。個々の教員が限られた時間で全てのことに対応するには間違いなく限界がある上に、学校全体としても非効率が生じる可能性が非常に大きいと考えられますので、情報収集と情報共有の体制を構築することは、進路指導以外でも様々な面での効率化につながるのではないでしょうか。
(文責:木村)