本日はちょっと残念なニュースをお届け。
日本経済新聞より。
公益法人、8割源泉徴収漏れ 学校などで不適切処理 :日本経済新聞
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事業者が従業員に給与を支払う時に天引きする必要があるのが源泉所得税。
従業員はこの制度があることによって、確定申告をせずに毎年の所得税計算を完了することができます。いわゆる「年末調整」というものです。
そして、源泉所得税を天引きする作業が「源泉徴収」で、法令上、源泉徴収は事業者の義務とされています。
そしてこのたび、日本経済新聞が東京・大阪国税局に情報公開請求し、入手した内部資料を分析したところ、一般法人に比べて公益法人の源泉徴収義務違反が多くみられた、ということが報道されています。
公益法人には学校法人はもちろん、社会福祉法人、宗教法人、財団・社団法人などが含まれます。
記事によれば、2014年6月までの5年間における源泉徴収漏れの割合は、
・調査対象全体では26.6%(調査対象件数約36万3千件)
・うち学校法人のみの割合:87.1%
社会福祉法人のみの割合:82.4%
宗教法人のみの割合:82.0%
となっており、「公益法人の突出ぶりが浮き彫りになった形だ」と記事には書かれています。
ちなみに、東京及び大阪国税局はこの5年間で1都2府7県の4,088法人を税務調査、うち3,368法人(全体の82.3%)の徴収漏れを指摘。さらにこのうち357法人は悪質な仮装・隠蔽行為があったとして重加算税の対象となっているとのことです。
私が耳にした話として、例えば特定の学年や教科を対象にした打ち上げ(懇親会)費用等は、厳密な意味での福利厚生費には該当せず、参加メンバーの給与として処理すべきであるとの指摘を受けたケースがあります。
この場合、給与からは源泉徴収する必要があるところ、それをしていないということでその分を納税するように求められます。
これもひとつの徴収漏れ事案になりますから、恐らく学校にはこのようなことを知らずに多くの源泉徴収漏れが発生しているものと考えられます。
意図的な脱税はもってのほかですが、教職員の福利厚生を意図した施策が結果的に脱法行為となっているケースはきっと少なくないように思います。
そしてこのように税務調査で指摘されると、本税の納税はもちろん、納付が遅れたことによる延滞税が取られるなど、余分な負担まで発生してしまいます。
たまたま私は税理士ですのでこのようなことには敏感に反応しますが、学校には通常公認会計士さんが関与されていますから、税理士が関与するケースは少なく、それがこのような結果につながっているとも考えられます。
校内における給与処理や福利厚生にかかる事務を一度見直し、源泉徴収漏れがないか、ぜひとも確認をお願いいたします。
そして、必要に応じて専門家にも確認を行うなどして、無駄な労力と無駄な出費の抑制に努めていただければと思います。