本日は以前にも採り上げたことのある、「2018年問題」に関する記事をお届けします。
毎日新聞に特集がなされたようです。
特集ワイド:大学2018年問題 「淘汰の時代」本格化 再び減少に転じる18歳人口、知名度高い大規模大に集中も - 毎日新聞
(全文読むには会員登録が必要です。ご容赦ください)
今回の記事は今後の見通しが簡潔にまとまっていて分かりやすいですね。
まず、市場のデータを整理しましょう。
大学への進学者数は概ね「18歳人口×大学進学率」で決まるわけですが、後者についてはすでに50%を超え、大学以外の進学先も含めるとすでに8割が進学者になっているとのこと。
そして前者、18歳人口に関してはこの記事の表題の通り、現在は横ばい状態ですが2018年からは減少。
2014年度:118万人→2018年度:118万人→2031年度:99万人
と推移することが予測されています。
「たった13年で約20万人もの減少」、これをこのように置き換えるとそのインパクトの大きさが非常に良くわかります。毎日新聞の記事より、日本私立学校振興・共済事業団私学情報室長のコメントを引用します。
「進学率50%として10万人、1大学の入学定員を1000人とすれば、実に100大学分の入学者が消えることを意味します」
一方で4年制の私立大の数は、といえば、短大からの転換組が多く現われ、
1992年度:384→2002年度:500超→2014年度:603(国公立との合計で781)
と増え続けているのが現状です。
この結果どうなるかと言えば、経営が苦しい私学が増える、という当然の結末に。
2014年度時点で既に定員割れしている私立大は265校(全体の46%)。
このうち、国の補助金が受けられなくなる定員充足率50%未満の大学は15校。
そして、2012年度のデータにはなりますが、208大学(全体の約35%)が赤字に陥っている、と記事には書かれています。
学生が増えていた時期には収入、収支差額ともにある程度を確保でき、それが学内の資金蓄積につながったケースもあったと思われますが、これからはそれを持ち出す一方…万一そうなってしまえば、そのうち蓄えは底をつき、施設の修繕等に回すお金が無くなり、さらにそれが進めば日常の学校運営も困難になります。
この状況を踏まえ、記事では数名のコンサルタントがコメントを寄せています。
要点のみ記せば、
・短大から4年制に転じ、学部学科が一つしかない単科大学などの中には質的に十分な教員をそろえられていない大学もあり、高校の先生も生徒を送り込むのをためらう
・今の大学は立地ビジネス化している。駅からバスで通わないといけない大学は、学生を集めるのが大変
・早慶、MARCH、日東駒専といった知名度のある大規模大学に学生が集中する傾向が強まるのでは
・偏差値50以下の大学は集めようにも志願者そのものがいなくなる恐れがある。私立大学は半減してもおかしくない
といったものが並んでいます。
そして極めつけがこのコメント。
「分数がわからないなど義務教育を終えていないような学生もいる現在の大学を、本当の意味での高等教育の場に戻せるかどうか。高等の名に値しないような大学はつぶれても仕方がない」
私自身は「つぶれていい学校」などひとつもない、と思っています。
どの学校も、必ず誰かの『母校』なのです。
卒業生から母校を奪う、しかも経営の不十分さでそうなることは絶対に避けねばならないことなのですから。
母校をなくしてはならない。これは私学の至上命題です。
だとすれば、経営改善、場合によっては経営改革は必須。
そのための方法論は必ずあるはずなのです。
まずは身の丈に合った経営基盤を作りましょう。
定員を減らす、先生の質とモチベーションを担保する(給与以外の方法で実現することは十分可能です)、自校の良さを認識し発信する。
市場が縮小するくらいのことで、経営をあきらめてはなりません。
学校には、未来へつなぐ夢があるのですから。