寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

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不登校増加の背景 教員不足、学校余力なく

先週もご紹介した、不登校の増加に関するニュース。

その背景に教員不足がある、という分析がありました。

日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

まずは下のグラフをご覧ください。

すでにご承知かもしれませんが、不登校の増加率は非常に大きく、

2013年度から11年連続で増加となっています。

2023年度には34万人が不登校とされていますが、

長期欠席全体としては49万人もの数に達しています。

コロナ禍で急増した印象が強いのですが、

実際にはそれ以前から増加が始まっています。

 

 

本稿の筆者である伊田勝憲先生は、

教職大学院で現職教員の研修を手がけていらっしゃって、

学校現場の実情を知る機会は多い、とおっしゃいます。

その中で、不登校生が増えている2つの構造的な背景があることに

気づかれたとのこと。

 

まず1つめが「教員の世代交代」です。

第2次ベビーブーム世代が就学するタイミングで大量採用された教員が、

2010年代半ば以降、続々と定年退職を迎えたことで、

40代後半から50歳前後の層が薄くなる一方、

20~30代の若手が一気に増えました。まさに世代交代ですね。

昭和の時代、登校拒否(当時はこう呼ばれた)が著しく増え始めた80年代も若手教員が多く採用された。増加の手前にみられる極小期は74年度で、今回の不登校増加前の極小期である12年度との間隔はくしくも38年、新卒採用から60歳定年退職までの年数だ。どちらも教員組織の力量が下がりやすいタイミングだったといえるかもしれない。


そしてもうひとつが「教員不足の深刻化」です。

教員不足は今さら言及するまでもないのですが、

そのことにより、学級担任に空き時間がなくなってしまうこと、

さらに育休明け等のタイミングで短時間勤務となる教員も増加し、

放課後に他教員やカウンセラー等との連携が図りにくくなっていることで、

不登校生が増えているのではないか、とのご指摘です。なるほど。

 

中学よりも小学校で不登校の増加率が高い点についても、

以下のような分析がなされています。

 

不登校児童生徒の直近の増加率は小学校低学年が中学校を上回る。(中略)そして、教員不足が最も深刻なのが小学校である。

通常学級の定員の40人から35人への引き下げは21年度の小2から年次進行で始まり、25年度に6年生まで及んで完了する予定だ(小1は11年度に実現)。

学級が少人数になると教員の目が行き届きやすくなり、不登校は減ると思われるかもしれない。実際には、この35人学級化も教員需要を拡大し、教員不足を深刻化させる一因となって教員の多忙化を招いているおそれがある。

特別支援学級に在籍する児童生徒も、この10年で2倍以上に増えた。特別支援学級は通常の学級より少ない8人が上限となるため、やはり教員需要を押し上げる。

ニーズに応じた教育や支援を受けられる子どもが増えるのは望ましい。だが筆者は、そもそも通常学級で児童生徒のニーズに沿った配慮に手が回りにくくなっていることが問題の本質であると考える。

本来なら、特別支援学級を選択する必要のなかったケースも少なくないのではないか。だとすると現状は悪循環である。

 

教員不足という現象に関しては、志望者そのものが減っていることが

指摘されることが多いですが、名古屋大・内田良教授らの調査では、

この10年で教員採用試験の女性の受験者数が半減したそうです。

筆者はこう指摘しています。

いわゆるブラック職場のイメージが、特に女性の教職離れを加速させている。ジェンダー平等や待遇改善の進む民間企業との人材獲得競争に学校が敗北しているのかもしれない。

 

今回の記事を読むにつけ、学校で起こっているいろいろな問題や課題が、

その根源を同じくしているような気がしてなりません。

学校現場における教員の働き方を、形のみならず、

その質から変えていく必要がある必要性を強く感じます。

 

筆者はこうも指摘しています。

戦後、日本は早い段階で小学校を含む教員養成を大卒水準に引き上げた。今では多くの国で院卒の教員が増え、日本は後れをとっている。19年の国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)によると、修士以上の学位を持つ教員の割合は調査参加国・地域の算数分野の平均で28%だが、日本は5%にすぎない。

求められる教育内容・方法が高度化する中、教員の資質に関する基礎的条件が厳しい中で、日本が国際比較で高い学力を維持しているのは奇跡のように見える。

しかし、そうした学力などの調査時に欠席している児童生徒がいることを忘れてはならない。学校教育の質を高めることが喫緊の課題だが、教員不足により「それどころではない」のが今の姿だ。

 

これからの学校教育を考えますと、単に教職の免許を持つ、

というところにとどまることなく、幅広かつ奥深な課題に対応できる

豊かな人材を教師として育てていく必要があると思います。

貴校園では、教員を育てるしくみをお持ちでしょうか。

採用が後手に回らざるを得ない昨今、何よりも重要なのは

採用した教員を育てていくことではないでしょうか。

 

今回の記事を、筆者はこう締めておられます。私も大いに共感します。

近い将来、少子化で教員不足が改善しても山積する諸課題が消えるわけではない。その中で学校教育に希望をつなぐには、教員の専門性向上と、それに基づく多職種の連携・協働が必要不可欠である。

 

(文責:吉田)

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