ちょっとショッキングなニュースに目がとまりました。
学ばない学生、奨学金取り消し 586人、大学の判断覆す 学生支援機構
(全文読むには会員登録が必要です。ご容赦下さい)
以前のニュースで、「奨学金返還の滞納が増えている」という記事を見たことがあったのですが、
その対応策なのか、厳しい措置に出たようですね。
このニュース、タイトルを見ただけだと、これまでされていた奨学金の支給(貸与)がなされなくなった、
という事例が586件あった、というようにも読めるのですが、その実はもっと深刻です。
奨学金というのは、年度ごとに審査を受けるシステムになっていて、
新年度にも貸与の継続を求めるためには「継続願」の提出が必要です。
ただ、継続願を出したとしても、やむを得ない理由がないのに留年したり、
ほとんど単位を取っていなかったりする場合は、「廃止」と認定され貸与資格を失うケースがあり、
そうでなくても最長1年貸与を止める「停止」という措置を受けることもあるようです。
昨年度の場合、「継続願」を提出したのが91万人。このうち、「廃止」は1万846人。
今回のニュースにある「586人」は、あくまでも大学の判断を覆して廃止とすべきとされた件数とのことなので、
実際のところ、かなりの学生が廃止の認定を受けている現状があるようです。
学生支援機構によれば、
「奨学金は学ぶことを応援する制度。学ぶ姿勢が見えないと認定された場合は、厳しく対応せざるを得ない」
と、もっともなコメント。
ですが一方で奨学金の問題に詳しい専門家は
「やむを得ない事情で勉学に集中できない状況の学生もいる。
回収の強化より、もっと奨学金を充実させて学習環境を整える方が大切だ」
とコメントしています。
どちらも一理ある、とは思うのですが、学習環境を整えるという意味においては、
お金の面はもちろん、学校で学びたいという意識の喚起がそれ以上に重要なのではないか、と感じます。
現在、優秀な学生や生徒の獲得のために、学校独自の奨学制度を検討、あるいは実施している私学が
少なからず存在します。
入学時点ですでに優秀な生徒を募ることの意義は学校側にも生徒側にもあると思いますので、
それはそれで結構なことでしょう。
が、これから本当に求められることは、
生徒の学力や生きる力をどのくらい「伸ばせるか」
という観点ではないか、とも思うのです。
入学時にはできなかったことが、その学校のおかげでできるようになった。
気付いていなかったことに気付けた。毎日が楽しくなった。夢や希望を持てるようになった…
学校が提供できる学びの環境というのは捉え方によっては無限に広がると思います。
奨学金は「学びの環境」という大きな要素のうちのひとつの手段。
ほかの手段も含めて、学校がその名のとおり「学び舎」であるために、
より広い意味での環境整備に努めていただきたいと願っています。
(文責:吉田)