貴校園ではコロナ禍の影響が収入に及んではいませんでしょうか。
学校に通う子どもたちとその家計には、想像を超える影響があるケースも
きっと存在していることでしょう。
そんなとき、後押しになるのが奨学金。
奨学金に関する工夫の実例が掲載されていましたのでご紹介します。
日経新聞より。
(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)
新型コロナウイルス禍でアルバイト収入が減少し、
結果的に学業の継続が難しくなり退学…
という最悪のシナリオを防ぐため、
関西学院大学は借りやすく工夫した独自奨学金を導入されました。
今回の記事は同大の副学長からの寄稿とのことです。
関西学院大学は村田治学長の決断の下、今回の事態で「1人の退学者も出さない」ことを基本的な対応原則とし、その一環で「関学ヘックス(HECS)型奨学金」という独自の奨学金制度を導入した。HECSはオーストラリアで普及している学費の後払い制度である。本稿では豪州の制度に着想を得たこの奨学金の狙いや成果、そこで得られた気づきについて報告したい。
1つは給付型の「特別支給2020奨学金」で、
対象はコロナ不況による保護者の収入減など家計の急変により
学費納入が困難になった学生です。
上限額は40万円、学費相当額の2分の1を支給するものとなっています。
そしてもう1つがHECS型で、自身のアルバイト収入などが減り、
生活が困難な状況になった学生に無利子で貸与されるものです。
貸与額は3万円からで、学生は必要に応じて
年間の授業料相当額に達するまで何度でも借りられるそうです。
授業料は学部・学年により異なりますが、最大で125万円程度と
かなりの金額になります。
そしてこの貸与型奨学金の返還は卒業後、
年収400万円に達してからでOK、とのこと。
私自身、奨学金のお世話になりましたが、
社会人になった瞬間から返済が始まり、結構大変でした。
借りる側にとっては有難い施策だと感じます。
同大での制度利用状況は下表の通り。
これらの支援策の効果もあったのでしょう、
同大でこれまでにコロナ禍による経済的理由による退学者は2名。
この記事を寄稿された副学長も
「困窮学生のほとんどの退学を食い止められた」と評価されています。
今回の記事では、同大での施策を知ることができると同時に、
そのポイントになっている点も記載があります。
私が特に興味深く感じたのは以下の2点です。
まず1つ目に、「自活している学生の多さ」について。
HECS型奨学金の利用状況で想定外だったことがある。利用者の半分以上が限度額いっぱいまで借り入れたのだ。アルバイトで学費や生活費を自弁している学生が相当数いるとみられる。
私大であっても保護者に頼らず学費や生活費を賄っているケースが多い、
というのは、これから学費を考える際に一定程度、
念頭に置いておかねばならないかもしれません。
そしてもう1つ、「在校生や卒業生への調査の重要性」について。
HECS型の返還猶予の基準を「400万円」としたのは、本学が13年から実施している卒業生調査(抽出)の結果に基づく。卒業から6年目に、卒業生のおよそ6割が年収400万円に達していた。このデータがあったことで貸し倒れのリスクなどを概算できた。卒業生調査の重要性が図らずも明らかになった形だ。
学校には様々な財産がありますが、何より大きいのは
「同窓生」という財産ではないか、と常々感じています。
卒業後の状況についてつかんでおくことは、
いろんなところで活かせる情報を保持することになるでしょう。
そしてそれを再び自校園の活動に反映させ、よりよい改善を行うことで、
学校経営は発展を続けることができるような気がします。
(文責:吉田)