すでにご承知いただいているかと思いますが、
改めて確認しておきましょう。
私学にとって重要な判例であることは間違いありませんので。
日経新聞より。
(会員限定記事となっております。ご了承ください)
名古屋自動車学校(名古屋市)で定年後に嘱託社員として再雇用された元教習指導員の男性2人が、基本給などを下げられたのは不当だと訴えた訴訟の差し戻し控訴審判決で、名古屋高裁は2月26日、学校側に計336万円の支払いを命じた。判決は同一労働同一賃金を巡り、職務給や勤続給などの要素が絡み合う正社員の基本給を基に、非正規社員に見合う額を算出することの難しさを改めて浮き彫りにした。
この判例について、事実関係を改めて確認しておきます。
訴訟を起こした元指導員のうち1人は、
2013年の退職時の基本給は181,640円で、
これが嘱託契約で74,677円に減少しました。
もう1人は同じく167,250円から72,700円と、いずれも
【半額を下回った】ことになります。
そして、この減額が
「正社員と非正規社員の間に不合理な待遇格差をつけること」
を禁じた法令に違反するとの主張により、2016年に提訴しました。
その後、この裁判は最高裁まで行ったのですが、
その手前の地裁と高裁では、
職務や配置は退職前と変わらないにもかかわらず、
嘱託の基本給が【若年正社員をも下回る】ことを問題視し、
基本給が【退職時の60%を下回る】減額は不合理で違法と認定しました。

一方、上告された最高裁では、二審判決のうち
基本給と賞与の賠償部分を破棄、審理を高裁に差し戻しました。
判決では基本給の格差についても、他の労働条件の相違と同様に不合理と評価される場合があり得ると初めて示した。同校の基本給について「勤続給だけでなく職務給や職能給の性質を有する余地もあるが、高裁判決はその性質と目的を何ら分析していない」と指摘した。最高裁は18年のハマキョウレックス判決以後、同一労働同一賃金の裁判で、手当や休暇について個々に「性質と目的」を分析する枠組みを示しており、基本給にも当てはめるようヒントを出したわけだ。
ということで、差戻控訴審で高裁は学校側に詳細な賃金データの提出を求め、
その検討結果を裁判長は判決でこう述べました。
「正社員指導員の基本給は勤続給や職能給の性格が小さく
職務給の割合が高い。
嘱託社員の基本給も職務給としての性質を有し、
正社員の職務給と同質のものといえる」
職務給なのであれば、経験豊富な嘱託の基本給が
【若年者を大きく下回ることは不合理】との結論になったわけです。
そして気になる「あるべき基本給額は」との問いに対しては、
率ではなく金額で結論を出しています。
記事ではこれを率に割り戻すと「55%」「57%」となる、としています。
しかしながら算出方法の説明はなく、訴えた側も訴えられた側も
不満を述べておられます。それはそうでしょうね。
ただ、これが日本の多くの場合の賃金制度と言えなくもありません。
貴校園の賃金制度の性質と、再雇用後の基本給設定について、
これを機会に改めて確認しておいていただければと思います。
そしてもう1点、ぜひとも覚えておきたい点があります。
別の記事になっていましたのでそちらもご紹介します。
(会員限定記事となっております。ご了承ください)
上記の名古屋高裁判決では、非正規社員との労働条件交渉で
雇用側が被用者を軽んじた場合、裁判で不利になることを示しました。
判決によると、元指導員が労働契約法旧20条の存在を指摘して格差是正を求めた際、学校側は「質問の趣旨がはかりかねる。(是正することは)若年社員の待遇に影響を及ぼし経営上ゆゆしき問題を引き起こす」と具体性のない回答をした。高裁はこれを不誠実な対応とし、旧20条で格差の合理性を判断する要素の一つとなる十分な労使協議を経ていないことになると厳しく評価した。
記事で成蹊大学・原昌登教授はこうおっしゃっています。
「労使交渉での不誠実対応は、使用者側の対応の不合理性を認める要素になる
という判断は先例として大きな意味を持ち、今後に影響する」
今一度、誠実な対応とはどんなものなのか、
きっちりとイメージしておくことが大切ですね。
本件は双方ともに上告し、5回目の審理に移行します。
改めて最高裁の判断に注目したいですね。
(文責:吉田)