いよいよ始まる、高校無償化全国版。
私学の中には期待の声も聞かれますが、
世間の受け止めも把握しておく必要があるでしょう。
日経新聞より。
(会員限定記事となっております。ご了承ください)
自民、日本維新の会、公明の3党が大筋合意した高校授業料の無償化も財源確保が棚上げになっている。3党は(10月)29日の実務者会議で、財源策に先行して詳細な制度設計に合意した。低中所得世帯向けの奨学給付金の対象拡大などを加えたことで必要額が膨らみ、(10月)31日に予定していた正式合意の署名式を見送った。

政情はいったん横に置くとして、
まずはこの制度の正確なところを理解することが重要です。
上の図はご紹介している記事に付されていたものですので、
そちらもご参照ください。
3党の実務者による合意内容によりますと、
現在の制度では、全日制私立高校の就学支援金の支給上限は
世帯年収により118,800~396,000円となっているところ、
2026年度から年457,000円に引き上げ、所得制限も撤廃されます。
通信制の上限も、現在の297,000円から337,000円に引き上げられます。
一方で、留学生など日本への定着が見込めない生徒や、
外国人学校の生徒は対象外とされ、記事には
「別の方法での支援を検討する」と記載がありました。
さらに、教科書代や修学旅行代などを支援する奨学給付金は、
現在は対象が生活保護世帯や住民税非課税世帯となっていますが、
これを「中所得層」まで拡大する方針とされています。
そしてこの政策にはすでに課題が指摘されています。
まずは財源の確保。維新が提示している案では6,000億円とされていますが、
この金額が妥当なのか、さらにはその財源がどうやって確保されるのか、
文科省の次年度概算要求資料を見てもよく分かりません。
この課題は非常に大きいものだと感じます。
さらに、本件は議論が不十分なまま、政治の駆け引きの道具とされた感もあり、
本来最も重視すべき「高校教育全体の質向上」という課題も指摘されています。
そして世間の関心を引いていることのひとつに、この政策によって
「私立人気が加速し、公立校が統廃合されてしまうのではないか」
との懸念があります。
これを受けて、文部科学省は今年度内に公立高を対象とした
DXや理系転換などを盛り込んだ「グランドデザイン」を作成する方針で、
これを基に都道府県に高校改革計画を作ってもらい、
交付金を配分して後押しすることとされています。
無償化というにんじんによって私学に通う生徒が増え、
一方で実費相当の費用が払えないという家庭も増え、
さらに公立校は将来ビジョンに基づく中長期を見据えた経営を進めていく…
経営という側面からは公私の境界線が薄まっていくような気がしてなりません。
もうひとつ、記事にはこうも書かれていました。
私立側の「便乗値上げ」も懸念されている。保護者の負担が減る分、授業料を引き上げる動きが出かねないためだ。3党合意では授業料を一元的に確認できるウェブサイトの整備や、便乗値上げをした私立への補助金減額措置などによって対策する考えを示した。
何をもって便乗値上げとされるのか、判断は相当難しいと思いますが、
いずれにしても、値上げに対する世間や行政の逆風は
それなりに想定されるところです。
本政策が本当の意味で私学の後押しになるのかどうか、
私は相当に懐疑的ですが、とにかく推移を見守りたいと思います。
そして貴校園も、制度がどうあれ、自律財政を念頭に、
安定経営を目指していただければと願っております。
(文責:吉田)