年度末がどんどん近づき、新年度の組織が固まってくる時期ではないかと思います。
想定しているカリキュラムや学年団に対し、教職員数は過不足なく確保されていらっしゃるでしょうか。
近年は教員の確保が難しいという声もあちこちの私学からは聞こえてきているのですが…
そんな中、今日は雇用に関する統計分析レポートをご紹介します。
珍しく、厚労省からの情報です。
非常に端的なレポートですが、興味深い内容です。
冒頭付近に記載がある通り、有効求人倍率は景気の一致指数であると考えられています。
さらにレポートでは
「過去においても、経済拡張期間が長かった局面で1倍を超えることがあった」
と書かれており、昭和38年以来の季節調整系列でみると、今回と同様に1倍を超えたのは過去3回(昭和42年・昭和63年・平成17)あったとのことで、今回(平成25年)が4回目になっているようです。
そして今回の特徴として、以下の内容が記載されていました(筆者まとめ)。
(前提)
・有効求人倍率=有効求人数÷有効求職者数
・有効求人や有効求職者は「常用」労働と「臨時・季節」労働に区分できる
・季節調整系列で提供されている有効求人倍率(「一般」)は「常用」と「臨時・季節」を合算したもの
・「常用」労働とは雇用契約において雇用期間を定めないか又は4か月以上の雇用期間が定められているもの
・「臨時」労働とは雇用契約において1か月以上4か月未満の雇用期間が定められているもの
・「季節」労働とは季節的な仕事に就労するか季節的な余暇を利用して一定期間を定めて就労するもの(期間は4か月未満、4か月以上の別を問わない)
(統計の内容)
・暦年値ベースでの「常用」有効求人倍率は0.83倍で、過去のものと比べて最も低い
・「一般」の有効求人倍率を100とした指数でみても、「常用」有効求人倍率の水準が低い
・「常用」のなかでも「常用的フルタイム」の有効求人倍率が低い
・「臨時・季節」求人数は24万人で、昭和63年、平成17年と比べ多い
・一方で、有効求職者の内訳をみると、「臨時・季節」で働くことを希望する者は長期的にみて減少している
・有効求人倍率の上昇過程における求人増加の内訳をみると、平成21年から25年にかけては、臨時・季節と常用的パートタイムの増加が拡大しており、常用的フルタイムの求人増加はあまり力強くない
・最近の新規求人の動向をみると、常用的パートタイムは主に「医療、福祉」と「卸売業、小売業」で、臨時・季節は「サービス業(他に分類されないもの)」で増加している
これらを踏まえて、レポートでは最後にこんなコメントがなされています。
『有効求人倍率は1倍を超えたが、求職者の希望に応えた職業紹介を実現していくためにも、正社員求人を中心に常用求人を確保していくことが課題である』
レポートの見解は確かにそうなのですが、やはり常用者を雇用するリスクというのが経営には付きまといますので、労働者の身分安定に関する規制が強まると、実経済ではその逆に事が動いてしまう、ということはよくあることなのかもしれません。
ただこのレポートを見ながら感じたこととして、仮に労働市場でこのようなミスマッチが多く起きているのであれば、ひょっとするとそのギャップを埋めることで優秀な人材を確保できる可能性も十分あるのではないか、ということです。
例えば、職を求めるある優秀な人物が「常用での雇用を求めている」という以外の要素は求人側とぴったりマッチしている場合。
逆に、人を求めるある私学が「臨時での応募者を求めている」という以外の要素は求職側とぴったりマッチしている場合。
実はこのようなケースは少なからず存在しているのではないでしょうか。
もちろん、常用する前提であっても、試用期間も存在しますし、採用当初の処遇はその後と全く同じにしなくてはならない、というわけではないでしょう。
とすれば、経営サイドとしてそこまでリスクを考えるべきなのか…少々慎重になりすぎているきらいは確かにあるのかもしれませんね。
採用というのは本当に難しいものです。
期待した人物が期待通りにはなっていない…そんなお悩みは日常茶飯事でしょう。
とすれば、その人の働きぶりがやはり何より大切、ということですよね。
仮に「常用か否か」、私学の場合には「専任か否か」、ということだけで優秀な人材の採用を逃しているとすればもったいないことなのかもしれません。
今回の統計では4か月以上の雇用期間があれば常用にカウントされるようですので、私学の常勤や非常勤のケースは該当しませんが、それでも期限付きかどうかという点については同様の傾向が指摘されうるのではないかと思います。
固定観念のようになっている「期限付き雇用」を、一度ゼロから考えてみるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
(文責:吉田)