寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

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高校入試「デジタル併願制」利点は 「諦め」なくし不公平解消

公立高校の併願制、気になっている私学関係者も多いでしょうね。

きちんと論点整理しておきたいところです。日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(会員限定記事となっております。ご了承ください)


今回の記事は、公立高校入試で生徒が複数の高校に出願できる

「デジタル併願制」の導入を提唱している側のお一人である、

東京大学マーケットデザインセンター(UTMD)・小島武仁教授への

インタビュー形式で展開されています。

 

まずは記事に付されていた、デジタル併願制のフローイメージを

見ておきましょう。下の図をご参照ください。

 

 

まずは、これまで多くの自治体で採用されてきた単願制には

「不公平性」というデメリットがある、と指摘されています。

1校しか出願できないことで、例えば家庭事情で公立しか選べない生徒は

実力より低いランクの高校への出願を強いられる、とのご意見です。

 

ただ一方で、単願制であれば第1志望を絞ることになるからこそ、

生徒が進路を真剣に考えることにつながり、進学後も愛校心が強まる、

という意見もあります。これに対しては以下のように反論されています。

「志望校を真剣に考えることは大事だが、実際は偏差値を基にした指導が行われているのではないか。その結果、形の上では第1志望といっても、行けそうな中で妥協もして選んだ学校であれば、愛校心が芽生えるという証拠はないし、逆でもおかしくない」

「DAアルゴリズムを反映した併願制にすれば合格可能性の読み合いをする必要が基本的になくなる。どんな高校で何を学ぶかを考える、勉強や部活動を頑張るといったより生産的な活動にもっと時間を使える」

 

確かにそう言えるような、でも少し違和感も覚えるような…

そもそも、この考え方自体に

「偏差値が高い学校のほうが志望順位が高いはず」

といった前提が無条件的に付されている気がします。

が、私自身も含め、高校進学時に偏差値が高い学校のほうが

志望順位が高いとは限らないケースが少なからずあることを、

塾講師時代にもたくさん経験してきました。

記事には「単願だから偏差値頼みになっている可能性がある」

との指摘もあるのですが、それは新たな制度を支持する側にも

言えることなのではないか、と思ってしまいそうになります。

 

さて、公立高校に併願制が導入された場合に懸念されているのが

高校の序列化、もっと言えば人気投票化が進むことです。

小島氏は

「希望する生徒が多い高校は応募が増え、

 そうでない高校が減るという変化は予想される。

 教育に魅力があるかどうかが人気に直接、反映されるようになる」

「各高校がそれぞれの魅力を高めるインセンティブが強まる。

 よい高校が難関と思われて敬遠され、蓋をあけたら定員割れ、

 といったこともなくなる。

 公立高全体では単願制を続けるより入学者が増えるのではないか」

とおっしゃいますが、こうなると完全に公立高校としての存在意義、

すなわち「地域を問わず、標準的な中等教育を受けられる教育機関

というところが満たせなくなるのではないか、とも心配します。

公私のすみわけはここに根源があると思うのですが…

 

記事には他にも、懸念される点についての質疑がなされていますので、

私学の皆様にもぜひご一読いただければと思います。

そして、併願制の功罪はいったん横に置くとしても、

この制度が導入されれば、私学への影響は少なからずあるはずです。

 

先日まで盛んに報道されていた高校授業料無償化もしかり、

公的な制度というのは私学の生徒募集、ひいては経営に

大きな風をもたらすものになることは必至です。

だからこそ、必要なのは自校園がどうなりたいか、というビジョン、

そしてなりたい姿に向かうための行動計画です。

 

世間の風を感じながら、その風の中を力強く進んでいく、

そんな私学が永続されることを心から願っております。

 

(文責:吉田)

www.ysmc.co.jp