寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

某私大、15年度から募集停止 定員割れ続き

本日は非常に残念なニュースをお届けします。

朝日新聞より。


神戸夙川学院大、15年度から募集停止 定員割れ続き


なお、このブログで固有名詞を出すのは本意ではないのですが、ニュースソースに掲載されていますのでやむなく引用させていただきました。ご了承ください。


このニュース、先週末に流れましたので既にご存知の方も多いと思います。

記事には「少子化などで今後も経営的に必要な現在の入学定員(270人)を確保する見通しが立たない」「11年には、金融先物取引の失敗による多額の損失を埋めるため、同窓会の預金を無断で教職員給与に流用していた」と書かれており、これが2大要因になったものと考えられます。


仮のこの2つの原因からすると、

・単年度の収入額が固定費を賄いきれない

流動資産が著しく不足している

ことが想定されますので、早速同大HPに掲載されているはずの決算概要を拝見しました。


ところが、決算概要と題しているページながら、掲載されているのは「消費収支計算書(内訳含む)」と「月次資金収支表」のみ。肝心の貸借対照表の掲載はありませんでした。

私のように勝手に財務分析してしまう者がいますから、情報公開には慎重にならざるを得ないのかもしれませんが、十分な事実確認ができなかったのは残念でした。


ちなみに、掲載されている情報から読み取った内容をいかに書かせていただきますと。

まず収支構造に関して。

帰属収入(≒法人全体の総収入)を1とすると、雑収入(このうちの多くは退職金財団収入のようです)がそのうちの約15%を占めており、経常的な収入としてはこれを除いて考える必要がありそうです。

そしてその場合、人件費、経費、借入金利息はそれぞれ収入のおおよそ62%、56%、9%となり、収支構造としては完全に赤字体質であることが分かりました。

さらに、資金繰りに関して。

掲載されている情報をそのまま飲み込むとすれば、

事業収支(≒本業の収支)…423百万円のプラス

・投資に関する収支…1,183百万円のプラス

・財務収支(≒借入とその返済)…1,575百万円のマイナス

となっており、借入の返済は大きいものの、本業では黒字ですから、それほどまずいこともないように見えます。

が、これは学校法人独特の処理方法によるものであって、実は上記の事業収入の中には「前期末時点で未払になっていたものの支払い」が含まれておらず、これだけで389百万円のマイナスになります。

また、2014年度末の資金残高は188百万円と表示されているのですが、このうち入学金や授業料の前受金が224百万円ありますので、実質的な余裕資金はゼロであることも分かります。


先日のブログの繰り返しになりますが、学校法人の経営悪化のステップは

生徒数が減る→収支差額が減少する→人件費率が上がる→積み立てている金融資産が減る→負債(借金)が増える→短期的支払いのための現預金が減る

というケースが多く、今回ニュースになっている学校法人さんはまさにこのケースに該当します。


中長期を見据えた経営をすれば、財務が致命的になることは必ず防ぐことができます。

事態がそこに至る前に、真剣なご対応をお願いしたいと思います。


(文責:吉田俊也)


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