長文の記事ですが、ぜひとも考えてみたいテーマだと感じ、
採り上げることとしました。日経新聞より。
(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)
学歴でなくスキルを基準に人材を選ぶ企業が世界で増えている。IT(情報技術)産業で先行している。デジタルトランスフォーメーション(DX)で目まぐるしく変わる企業のニーズに、既存の大学教育が追いついていない。多様な働き手のキャリアの機会を広げることは、成長の足かせである人手不足を解消する有力な処方箋になりそうだ。
早速ですが、記事内容のまとめは下のまとめの通りです。
学歴採用からスキル採用へ、という流れが生まれていることが
うかがえます。
記事の本文に登場するのはサイバーエージェント、
日本IBMといった、最新技術が事業の核となる企業である、
とは言えそうです。
サイバーエージェントではこの4月に採用した
新卒エンジニア職約110人のうち1割強が専門学校卒業などの
「非大卒人材」である、とのこと。
また日本IBMでは従来、原則大卒資格を求めていたものを
2023年新卒採用から学歴要件を撤廃。
「学歴で制限することは人材の幅を狭める」との判断だと書かれています。
DXの加速でIT関連などの専門人材は世界で争奪戦になっている。米コーン・フェリーは30年までに世界で約8500万人の人材が不足し、約8.5兆ドルの成長機会が失われると予測する。デジタル後進国で少子高齢化が進む日本は、政府試算で約230万人のDX人材が不足するとされる。
高い専門性が必要なIT職を中心に「学位よりスキル重視」の採用が広がる。背景には既存の大学教育と、企業ニーズの乖離(かいり)がある。経済産業省が17年、国内の働き手に「業務に必要な専門知識をどこで学んだか」と尋ねたところ、「大学」と答えた人の割合は情報系で33%。主要職種で最低だった。特に日進月歩のデジタル分野の知識の習得は、企業の研修や自学自習が中心となる。
私学としてぜひ意識しておきたい点が2つある、と感じます。
まずひとつは、働く側に求められる事柄の変化です。
定型業務はそれなりに重要ですし、
間違えないこと、見落とさないこと、知識や経験を蓄積することは
軽視できることではありません。
しかしながら、それらの業務はAIが得意とするところとなります。
むしろ、そういった定型業務を大過なく進められるような
「自動化」「標準化」「効率化」そのものを進める力が、
働く側に求められるようになっていくことは間違いありません。
学校現場はともすると、旧来型の業務で手一杯、
となりがちですが、万一現状もそうなっているようであれば、
そろそろ発想や研鑽の方向性を大きく転換せねばならないのではないか、
と感じます。
そしてもうひとつは、学歴からスキルへ採用基準が変化するとすれば、
社会に卒業生を輩出する各校園がそのことを意識して
学校生活を組み立てる必要があるのではないか、という点です。
学歴社会というのは学歴というものさしのみに頼る格好になるため、
決して望ましいと言えない、と個人的には以前から思ってはいますが、
仮に学歴が何らかの意味を持っているとすれば、
それはその対象となっている学校に対する信頼感があってこそ、
と言えるように思います。
つまり、大卒かどうかで就職の可能性が変わるというのは、
大学教育への一定の信頼があって初めて成立し、
同じように〇〇大学、〇〇高校の名前が就職の際に通用するのは、
その学校に対する信頼があることが大前提であるはずです。
貴校園は、貴校園を卒業した生徒たちに対して、
社会からの信頼感を付与できているでしょうか。
もちろん、学歴のみで進路が定まるような社会は不健全である、
ということを思いながらではありますが、
それは単に「偏差値が高いという学歴」というものさしに対するものであって、
貴校園というブランドが社会で信頼を得られることは
私学として未来永劫、重要なことであると感じるのですがいかがでしょうか。
(文責:吉田)