大学の話題が続きますがご容赦ください。
経営が厳しくなる私学が増えている現状、
再編や統合の話題は避けられないかもしれません。
日経新聞より。
(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)
この記事はインタビュー形式になっているのですが、
まず最初に登場するのは、
別法人から「移管」された短大を受け入れた、
共愛学園前橋国際大学の大森昭生学長です。
「移管」とは設置者変更、要するに所属する法人が変わることを意味しており、
大森学長によれば、企業のM&Aでいう事業譲渡に近いもの、とのことです。
このケースでは、2018年に教育関連の集まりで、
職員同士が経営に関する話をしたのがきっかけになったとのことで、
譲渡側は学生募集に課題をかかえていたこと、
そして譲受側はもともと文系のみで構成する大学であり、
譲渡によって理系の学科を設置できるという利点があったこと、
さらには土地建物が無償譲渡だったことが決め手の一つになり
実現できたとの話が掲載されています。
「譲り手側の理事長が経営判断をしたことも大きい。全国で短大が減る中で、学生と教職員の学びをどう守るかを第一に考えていた」
「大学の再編・統合に関する枠組みはあるが、相手探しから条件交渉、認可申請まで自前でするのが基本だ。事務手続きの相談先はあるが、仲介役が不在だ。経営の話は非常にデリケートで話しにくいことも多いが、学校法人は相手探しの部分から譲り手と受け手が直接交渉するほかない」
というわけで、この記事では、民間企業でM&Aを手掛ける
日本M&Aセンターの熊谷秀幸取締役の話も掲載されています。
「企業のM&Aでも相手探しが最も難しい。売り手企業の理念や経営方針がある中、感情面で譲渡に抵抗を感じる経営者も少なくない。大学でいえば、私大の『建学の精神』に通ずるものがあるだろう」
(中略)
「相手先の選定と打診の部分はまさにM&Aの仲介が手掛ける領域だ。譲り手が赤字経営でも、統合して学部の種類が増えれば学生募集などの点でスケールメリットを追求できる」
(中略)
「企業の株式のように金額が明確な仲介の対象物がないと交渉しにくい。同じように株式を持たず公共性が高い医療法人は出資持ち分や基金を対象物にして、ここ10年で案件が増えた。仲介の対象物をどう考えるか、議論が必要だ」
最後にコメントのあった「明快な仲介の対象物」は、
仲介業者の手数料算定が難しい、ということが暗に表現されていると
感じますが(苦笑)、いずれにしても、今後は学校種の移管、
すなわち設置者変更のケースはそれなりに出てくると感じています。
できればそうなる前に、建学の精神を大切にした各校園の活動が
永続できるような経営改革を実現していただきたいと思います。
万一それでは立て直しが難しいとなった場合には、
こういう選択肢があることも頭の片隅に置いておく必要があるかもしれませんね。
(文責:吉田)