寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

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変わる高校教育 探究、学校づくりの中心に

現役校長による、興味深いお話が掲載されていました。

日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

この記事を執筆されたのは、山梨県立笛吹高校の広瀬志保校長です。

今年度から高校では「総合的な探究の時間」が開始されましたが、

公立校はもちろんのこと、私学でも独自色が強くなるであろう、

この時間をどう設計するかは、学校特色化という観点からも

力を入れるべきところではないかと思います。

 

広瀬校長が勤務する山梨県立笛吹高校でも、

探究を中心とした学校づくりが進んでいる、とおっしゃいます。

本校は普通科、食品化学科、果樹園芸科、総合学科のある総合制高校だ。ミッションは「主体的に学ぶ力を育て、地域に根ざし、地域に貢献し、地域のリーダーとなる人材を育成する」であり、その実現のための方針の一つとして「笛吹GP」を掲げている。

GPはグラデュエーション・ポリシーの略。具体的には理解力、吸収力、継続力、思考力、選択力、言語力、発想力、行動力、参画力の9つの力の育成を指す。教育活動は全てGPに結びつき、特に総合探究はGPの達成も踏まえてゴールや内容を定めている。

今年度3年生が行った探究では、参画力の向上を目標に約30人の笛吹市職員を招き、生徒が地域の課題を解決する施策を提案した。当日は職員から助言を得たり、対話をしたりして市政や行政への参画意識を高めた。ミッションである「地域に根差した人材育成」にもつながる活動である。

 

上記引用をお読みいただいて、どのようにお感じになるでしょうか。

カリキュラムの設計、授業の組み立てのためには、

その上位目標をはっきりさせることが当然必要なはずです。

ところが、それぞれの教科指導において、例えば

グラデュエーション・ポリシーはどのくらい意識されているでしょうか。

各教科は教科としての達成目標のみを念頭に置くことが多いとすれば、

それは果たして各校園の目指す生徒像を実現することにつながっているでしょうか。

 

昨年、広瀬校長は全国の高校教員120人に

「総合探究を行う上で重点を置いている項目」をアンケート調査したところ、

回答者の実に78%が

「学校として身に付けさせたい資質や能力の明確化」

を挙げたとのことです。

グラデュエーション・ポリシーを念頭に置いたカリキュラムの必要性は

本当に高いと言えそうですね。

 

探究への取組によって、教員の意識も変わった、

と広瀬校長はおっしゃいます。

かつては教科間の壁が高かったが、総合探究では生徒それぞれが課題設定・情報収集・整理分析・まとめ表現というプロセスを進める必要がある。生徒のテーマに対し多様な教科の教員が支援しなくてはならない。

これにより教員間の協働と教科横断的な取り組みが欠かせなくなった。探究は教科横断的な学びの中核ともなっている。

 

そして、こうやって教員間で教科横断的な視点ができたことで、

生徒の学び方が変わった、とのこと。

「伝統の和紙を広めるには」というテーマの探究では、和紙の原料や製造工程は理科、文化や伝統については地歴公民科、データの分析は数学科や情報科、デザインは芸術科、発表は国語科、海外への発信は英語科と、様々な教科の学びがつながった。

生徒からは「外国の方に英語でプレゼンをする際に外国語指導助手(ALT)が添削してくれ、数学の先生にはグラフの見方を教わるなど多様な教科の先生にアドバイスをもらい、テーマ外での学びも多かったのが印象に残っている」という感想が寄せられた。

教員間での情報共有はもちろん、生徒自身も習得した知識を活用して探究し、教科の学びとの往還を経験する。習得中心だったかつての学びからは大きく異なる、生きた学びである。

 

さて、貴校園ではグラデュエーション・ポリシーは明確でしょうか。

そして、授業をはじめとする校内の活動は、そのポリシーにつながることが

意識されているでしょうか。

上の表で示されたアンケート結果に登場する項目はどれも、

授業を始める前になすべき準備ばかりが並んでいます。

それほどまでに、計画性が重要だということだ、と私は感じました。

探究をどう組み立てるか、ということを通じて、

貴校園の学校づくりが進んでいくことを期待しております。

 

(文責:吉田)

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