実態に即した記事の内容だと感じました。
日経新聞より。
(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)
長時間労働がなぜいけないのか。
このことについてはすでに誰もがよく知っているところでしょう。
世界保健機関(WHO)などは、世界で年間約75万人が
長時間労働に起因する心臓系疾患などで亡くなっている、
と推定していますし、
企業の責任が問われる可能性が大いにあります。
そして今回の記事によりますと、
個人の時間ごとのアウトプット(限界生産物)は、
長時間働いた後は疲労により減少し、ゼロに近づく、とあります。
長時間残業を是正することは、企業の労働者に対する責任であるだけでなく、
企業の利益にもなるわけです。
しかし、それでも働きすぎがなくならないのが現実。
それはなぜなのでしょうか。
この記事では、残業をする理由によって
「非自発的残業」と「自発的残業」に分けたうえで、
その原因を考察されています。
まず非自発的な残業、つまり一定期間内にあてがわれる仕事量が
単純に多いために仕方なく残業しているケースについて。
こうした残業が生じるのは、仕事の個人間の割り振りが最適化されておらず、誰かが長時間残業している時に同じ会社の他の人はそれほど働いていない場合などだ。個人間の作業の平準化ができない理由としては、上司が部下全員の作業の進捗度合いを逐一把握できていないことなどが考えられる。また作業計画の設計が甘く納期前に仕事が集中するなど、作業の日程間で平準化されていないことが原因の場合もあろう。
これらのケースでは、個人間・日程間の仕事の配分を変えれば長時間残業が是正される可能性が高い。従って従業員の非自発的な残業の管理は総合的な生産・作業管理の領域だ。そして管理が悪いと、長時間残業につながる可能性がある。
では、従業員の自発的な残業についてはどうでしょうか。
筆者はこれについて、人事管理が影響する領域だと考えていらっしゃいます。
例えば会社の人事評価が成果主義ならば、成果を出すことを目指して、またはそのためのスキルを身につけて昇進することを目指して残業する人がいるだろう。こうした成果を出すための自発的な残業は、従業員が進んで中程度の時間残業をする理由にはなりそうだ。だが残業時間が長時間になるほど追加的に出せる成果が少なくなり、心身的にもつらくなるので、自発的に長時間残業をする人は少ないかもしれない。
いかがでしょうか。
貴校園での残業実態をご確認いただいた場合、
「特定の誰かが突出して残業時間が多い」
というパターンに入れば上記引用例に当てはまる可能性があります。
それが非自発的なものなのか、あるいは自発的なものなのか。
いずれにしても、マネジメントが残業に与える影響は大きい、
というのがこの記事の主題になっています。
実際、筆者らが実施した調査により、
生産管理(学校であれば活動自体の管理、ということになるでしょうか)と
人事管理(能力・成果主義の導入有無)が残業にどう影響するか、
を示しているのが下のグラフです。
負担の平準化が極端な長時間労働を減らすことはおそらく予想通り、
なのでしょうが、興味深いのは、
成果主義によって残業が増える、という点です。
そして、記事によりますと、こうした傾向は
特に若手や女性社員の間で顕著にみられたそうです。
成果主義的な人事管理方式を導入した企業では、それが従業員のやる気を高め、結果として残業をしていなかった人が残業をするようになったと考えられる。しかし成果主義の導入は月45時間以上の長時間残業には大きくは影響しないことがわかった。
働き方改革を検討されている各校園では、
人事考課制度の導入も課題と位置付けておられるかもしれません。
が、人事考課制度は場合によって残業を増加させる可能性もありそうです。
まずは業務自体の整理を行い、組織全体の業務量を適正化し、
個々への配分についてしっかり考えることが先決なのかもしれませんね。
(文責:吉田)