以前から少々心配していたことが、新聞記事になっていました。
日経新聞より。
(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)
記事の冒頭に登場するのは、進学校として有名な全国有数の進学校、
私立灘中・灘高です。
とある6月の土曜日、1、2学期に3回ずつ開く土曜講座が開かれ、
約600人の生徒が休日登校したそうです。
この日は在大阪スイス領事の話を聞く機会に恵まれた生徒の皆さん。
土曜講座では第一線で活躍する研究者や官僚、会社員、起業家などが
講義をされているそうで、校長は
「将来、幅広い分野で活躍してもらうため、生徒の好奇心を刺激したい」
と語っておられます。
ところが、灘高生は伝統的に医学部志向が強いそうで、
「多くの生徒が医学部を目指す。なぜだろう。
社会の発展やテクノロジーの進歩には工学も理学も重要なのに……」
という"ぜいたくな懸念"を校長は吐露している、と記事には書かれています。
河合塾によると国公立大医学部は50校中31校が偏差値65以上(23年度、前期日程)の狭き門。工学系で65以上は東京大、京都大、東京工業大の3校のみ。高学力層の強い医学部志向を物語るが、過熱する医学部人気は理系人材の偏在を招くとの懸念が広がる。
19年に経済産業省がまとめた意見交換会の報告書。デジタル革命の時代には数学人材の育成が急務としたうえで、「日本の中高生は数学の高い潜在能力があるのに、国際数学オリンピックの予選通過者では医学系へ進む人が多い」と危機感を募らせた。
それでも進学校は医学部合格実績を競い合う。行政も同じだ。東京都は都立高校7校を進学指導重点校に指定するが、基準の一つが「難関国立大学等の現役合格者15人以上」。対象は東大、一橋大、東工大、京大と国公立大医学部。医学部だけは一律で特別扱いだ。
このような状況について、記事ではいろいろな方がいろいろな角度で
問題を提起する発言をされています。
列挙してみますと、
「頭のよい子だけを集める入試制度が問題」
「最難関の医学部合格は頭がよいことの証明になり、高校も評価される」
「模試の成績がよいから医学部という指導はやめてほしい。
将来この生徒になら腹をさばかれてもよいと思う子に勧めてほしい」
「医師以外の理系人材のロールモデルを社会が高校生に示せていないことが
根本的原因」
「高校生には、安定していて世間から尊敬され、報酬が高い職業が
医師以外に見えない」
進路指導は、学力に見合った学校や学部を示すものではないはずです。
それはあくまでも結果論。
進学にとどまらない、本当の意味での進路開拓がなされる、
そういった学校の場であってほしいと心から願っております。
(文責:吉田)