給与制度設計の際に留意しておきたい着眼点です。
日経新聞より。
(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)
若年層の懐が寂しくなっている。新卒後10年間の給与の伸び率は1990年に比べ1割あまり縮小した。社会保障費の負担増で自由に使えるお金も少なくなり、結婚や出産などの将来設計に影を落とす。生活不安の解消へ成長力の底上げを急がなければ、少子化が一段と加速しかねない。
この記事には興味深い統計がいくつか紹介されています。
まず1つめに、所定内給与(≒残業代を除く月例給)の伸びについて。
下のグラフを見ると、時系列的に比率が小さくなってきていることが
分かりますね。
20代前半を100とすると、30代前半は1990年には151.0だったのが、
2020年は129.4となり、伸び率はこの30年で14%縮んでいます。
50代にかけての上昇も緩やかになった、と記事には書かれています。
さらに気になるのは「自由に使えるお金」が減っている、との情報。
第一生命経済研究所の星野卓也氏の試算によると、20代独身男性の実質可処分所得は20年に平均271.6万円と90年(318.7万円)から15%減った。健康保険や厚生年金保険の料率が上がり、社会保険料の負担額が29.4万円から49.8万円に膨らんだ影響が大きい。
国際的にも日本の若年層の経済力は低く、
26~40歳の可処分所得は2.6万ドル(約350万円)と、
米国(5万ドル)の6割に満たず、欧州主要国よりも低くなるそうです。
これも下のグラフが分かりやすいですね。
さて、貴校園の給与制度は新卒初任給以降の上昇カーブを
どのように設計されていらっしゃいますか。
最低賃金の上昇や採用競争力強化の観点から、
初任給設定を以前よりも引き上げられたというケースはあるかもしれませんが、
そうなると総額人件費が上がってしまうため、
その後の給与水準は上げずに、結果的に年次進行による上昇カーブが
緩やかになってしまう…、ということも十分あり得ます。
やはり、賃金設計においては「生活費」に一定の配慮が必要ではないか、
とこの記事を読んでも感じます。
負担増は個人だけでなく、私学経営上も影響があるわけですが、
それも含めたうえで貴校園なりの望ましい賃金制度をお持ちいただくことが
今後を見据えればとても重要な経営施策なのではないでしょうか。
若い世代に魅力のある業界でありたいと強く願う次第です。
(文責:吉田)