公立中学の実例紹介です。
日経新聞より。
(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)
記事に登場するのは、東京都板橋区立中台中学校。
6年前に校舎が改築され、「教科センター方式」が採用されました。
すべての教科の授業は特別教室で行われますが、
教科の壁を越えた授業づくりに力を入れているそうです。
まずは記事に付されていた「コラボ授業」の例を
下の表で見ておきましょう。
記事は同中学の校長先生のご執筆ですが、
私学でもよく見られる現象について、このように言及されています。
私が中台中学校に赴任したのは4年前になる。過去に経験した中学校で共通して感じたことは「教科の壁」の存在だった。
教員は教科ごとの免許を持っているため、自分の教科に専門性があるという自信をもっている。このため他教科の教員に口出しをすることは越権行為になるような暗黙のルールがある。
続けてこう書かれています。
私はまず、教科の壁を払拭したかった。専門性を高めることは必要だが、授業を受けるのは生徒たちである。知識が十分でない人たちに教えるには、むしろ専門外の意見に耳を傾けるべきだと考えた。教師にとっての良い授業を実践するのではなく、生徒のためになる授業を期待した。
私自身、私学の管理職の皆さんにはぜひ授業参観を、
とお勧めしているのですが、その理由はまさに上記の通り。
管理職がその授業の専門外であることがとても重要なことだと思うのです。
教科間の壁が厚い、あるいは教科連携が進まない、といった場合には、
それが本当に生徒目線になっているのかどうかを
ぜひご確認いただければと思います。
この記事に登場する中学でも、おそらく試行錯誤があるのでしょう。
記事には新聞社側からのコメントとしてこんなことも書かれています。
「生徒の興味関心が得られ、学習意欲がわく」「他教科の教科書を一度読んでみる研修もよいかもしれない」。中台中の報告書にはコラボ授業を実践した教員の前向きな感想が記されている。準備時間確保の苦労や他教科について間違った知識を与えてしまうリスクへの言及もあるが、総じて新しい授業づくりに挑戦する意欲が伝わってくる。
宮沢校長がいうように教科の壁は厚い。壁を越えようと議論したり模索したりする教員の様子や学ぶ姿勢に、生徒も刺激を受けるのではないだろうか。教員の仕事に創造性を取り戻す一歩ともなりそうだ。
ちなみに、この中学でのコラボ授業の企画はこんなふうに進んでいます。
コラボ授業を行うにはまず、各教師がつながる教科を調査する必要がある。時間を確保し、自分の教科の教科書を手にして同僚を回りパートナーを探し出す。例えば社会の教師が国語科の教師を訪ね、国語の教科書を見ると「東北地方」と「奥の細道」などの共通部分が見えてくる。
そこから話が広がり、松尾芭蕉のたどったルートを社会科で追いかけながら国語科で「奥の細道」を読み込んでいく、といった授業がイメージされてくる。
この時、教師は互いの教科の壁を越えて話し合いに没頭しているので、専門性を融合するような形で授業計画が練られていく。
コラボ授業の実例は上の表以外にも掲載されています。
- 「地震」(どこで発生しているかを考えるのは社会科、発生の仕組みは理科で扱い、災害時の対応などは保健や家庭科)
- 「持久走」(体育科に数学科がコラボ。10周で1500メートルの持久走を体育で行い、生徒たちは校庭で1周ごとのラップタイムを計測、グラフ化してその曲線について考察させ、理想とする走り方をグラフにする課題を出し、一定のスピードで走った方が速く走れることに気づいていく)
そして、コラボ授業は各教員が最低でも年に1回実施するとのこと。
理想としては学期に1~2回できるとよいが、現状では準備時間の確保が難しい、
と校長は書いていらっしゃいます。
そして今後は「教科のつながり」から「学びを生活や地域につなげる」ことへ
ステップアップしていきたい、ともおっしゃいます。
「どれだけの知識を身につけたか」よりも、
「どれだけ社会に生かすことができるか」が重要、
という観点で取組を進められている様子です。
貴校園は教科の壁は低くなっていますでしょうか。
そして、授業は生徒本位のものへと改善が進んでいますでしょうか。
ぜひともご確認をお願いいたします。
(文責:吉田)