寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

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高齢者雇用どう進めるか

今年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法では、

企業に70歳までの就業確保措置の努力義務を課しました。

さて今後高齢者雇用をどう進めて行くのか。

専門家の見解をご紹介します。日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

年金の支給開始年齢が引き上げられるなか、政府は生涯現役社会を掲げて、高齢者の就労意欲に訴える。しかし私たちには「働かなければ生活していけない」現実を突きつけられたように映る。果たして高齢者雇用の未来を明るく描くことは可能だろうか。

 

記事の冒頭はこのように暗いスタートになっているのですが、

まずは高齢者雇用の特徴を整理します。

 

第1に職種が偏っていること。

60歳以上の仕事は、管理職・専門職と、

身体的負担の軽いサービス職に偏っているのが現状です。

 

第2に再就職が難しいこと。

記事の筆者が集計した結果によれば、

2015年に未就業で就業を希望していた人のうち、

翌年に仕事に就けた割合は、60歳未満が37.2%であったのに対し、

60歳以上は14.6%と、厳しい状況にあったことが分かっています。


第3に健康問題。

身体機能が低下する高齢者は、若年層より労働災害の発生率が高く、

休業も長期化しやすい、と厚労省も注意を促しているようです。

 

このような特徴を踏まえると、やはり現職を続けること、すなわち

「継続雇用制度による雇用」が期待されることになります。

これに関し、実際に定年退職を経験された方

(大企業の正社員として勤務していた男性61~65歳)を対象に、

筆者が分析をされた結果が記事に載っておりました。

下表はその結果を示したものです。

 

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結果分析の中で興味深かったのは以下の記述です。

継続雇用者の仕事満足度は、継続雇用者以外の就業者に比べ低い。このことは、他の要因をコントロールした統計分析からも確認された。ただし、働き方に着目すると、継続雇用でも60歳時までに携わっていた業務に関する後進・若手の教育係や専門職に従事している場合には、仕事満足度が高かった。

 

同じ職場に継続雇用される、という事実よりも、

その職場でどんな仕事をするのか、という点が

満足度により強くつながっていると言えるのかもしれませんね。

 

今後、学校現場においても高齢者雇用が大きな課題になってくるはずです。

働く側の働きやすさを整えていくとともに、

学校運営を組織的に進めていくためのしくみづくりもまた

必須と言えるのではないでしょうか。

この記事には、定年前後の仕事の変化を考えるうえで

留意すべきことが2つ示されていましたので、

そちらをご紹介して本日の記事を閉じたいと思います。

 

第1は定年前後の処遇変化の合理性について、若い世代を巻き込んで、労使で議論を尽くすことだ。継続雇用は若年の雇用や賃金に少なからず影響を与える一方、高齢雇用者への施策は世代を超えた便益をもたらす面もある。例えば高齢雇用者の健康への配慮は、従業員のセルフケア意識を醸成し、通院と仕事の両立も可能にする。職域開発は専門性を向上させて、若手との相乗効果をもたらしうる。年齢を問わず活躍できる企業の生産性や採用力は高まるだろう。

(中略)

第2は高齢者自身で過去の経験から新しい活動の種を掘り起こすことだ。評論家の立花隆氏は、60歳は人生の中間再出発地点と述べた。人生経験を積んで形成された、その人なりのやり方・誠実さ(パーソナル・インテグリティ)がにじみ出てくる年齢であり、これを生かさない手はない。また筆者の調査によると、定年前後に勤め先や業務内容を変えた人ほど就業意欲が高く、新しいことを人に先駆けて試みる高齢者ほど幸福度が高かった。

改正法が促す社会貢献事業における高齢者の貢献は、労働の対価としての賃金だけではない多元的な評価を醸成して、高齢者の生きがい欲求にも応えるものとなるはずだ。新しいことにチャレンジして自らキャリアを開いていき、定年の区切りによらず「いつ引退するかを自分で決める」というキャリア自律の実践は、現役世代にとっても大きな励みとなるだろう。

 

(文責:吉田)

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