学校生活になじみにくい、という子どもたちが
学校を離れざるを得ない、ということが少しでも減るように、
公立校が実践されている工夫が紹介されていました。
日経新聞より。
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東京都立八王子拓真高校は昼夜間3部制の定時制高校。
不登校経験などのある生徒向けの入学枠「チャレンジ枠」のある
都内唯一の高校です。
現在は進学者が5割、就職者が3割の進路多様校で、
八王子市内の高卒就職者の6割は同校出身者が占めているそうです。
一方で、近年は不登校や転退学(中退)の急増が大きな課題で、
生徒数1千人弱のうち、2018年度における不登校生は198人、
中退者は104人に達していました。
背景には多様な課題を抱える生徒たちの増加がある。具体的には発達障害、貧困、虐待、ルーツが外国にあることで日本語が不自由など。学力のハンディも当然大きい。彼らはそれぞれの困難に応じた「合理的配慮」を必要としている。
こういった事情はもはや公立校に限らず、
私学でも顕在化しているのではないでしょうか。
転退学者が多くなっているという各私学の声を、
私もよく耳にするようになりました。
しかし、高校の指導は一律性が強い。特に単位・進級・卒業の認定や生活指導には校内規定が一律に適用される。高校は義務教育ではなく、生徒は一定の学力を備えていて当然という適格者主義、規定の柔軟な運用は不公平だという公平主義。そんな昔ながらの組織文化が根っこにある。
中学生のほぼ全員が高校に進学し、生徒が多様化した今日、こうした文化は授業が分からない生徒、規則が合わない生徒らを排除する仕組みになってしまう。私はこれを「合理的排除」と呼ぶ。
これもまた私学も同様、ではないでしょうか。
多様性にどれほど対応できるのか。
経営資源上の制約もある中で、この学校が実施した工夫を
簡単に見ていきましょう。
柱の一つは特別支援教育の考え方を導入したこと。
生徒への合理的配慮を校内規則に明示し、
一律の運用を改め、個別対応を基本に据えました。
単位取得を重視し、年5回の補習期間(個別指導期間)を設定、
欠席の多い生徒には年度末を待たずに補習を行います。
また、心身の病気やいじめ、希死念慮などで登校が難しい場合は
欠席回数が規定を超えても、オンラインで課題を提出するなどすれば
柔軟に単位を認めます。
保健室登校の生徒らのための学習スペースも校内に設置。
さらに2020年度から校内で「居場所カフェ」も開始しました。
若者支援の専門家である都派遣のユースソーシャルワーカーが運営しています。
これらの改革は道半ばだが、手応えを感じている、
と同校校長は書いておられます。
中退者、不登校生の数も2019年度から減少に転じているそうです。
さて貴校園での転退学の状況はいかがでしょうか。
学校生活になじめない、と一言に言っても、
その状況は生徒により異なるでしょう。
人的リソースが限られる中で、いかに個別の事情に寄り添えるか。
そしてそれを学校経営に吸い上げていけるか。
そのあたりが大きなポイントになるのではないでしょうか。
そしてもうひとつ、単位取得が形式的なものに陥っていないか、
質を備えたものになっているのか、という点も確認が必要でしょう。
中身が伴って初めて、社会に出て生きる知識や学力になるはずです。
出席日数よりも修得内容を重視する単位認定が、
今こそ求められるように思います。
(文責:吉田)