寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

解雇の金銭解決 実は定着

こういうことにならないのが最善ではありますが、

法務の知識ということでご紹介しておきたいと思います。 

日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

労働者の不当解雇が確定しても、労働者本人が同意していれば金銭で労働契約が解消される「解雇の金銭解決」の導入を巡る研究が、厚生労働省の検討会で進んでいる。だが実は労働審判などで年間4500件もの金銭解決が実質的に行われている。法制化を待たない「知られざる定着」は、潜在需要の高さを示す。正式な制度になれば、企業負担が膨張する可能性もある。

 

近年のご相談の中でも特に多いと感じるのが人事のトラブル。

そして、個人と組織との信頼関係が大きく損なわれてしまうケースも

決して少なくないと実感しています。

そのような中で、本日の記事のタイトルにあるような

金銭での解決を双方が望むケースもあるのではないでしょうか。

 

この点、記事ではまず、このような注意喚起がなされています。

ぜひ押さえておきたいところです。

解雇の金銭解決は、その語感から「会社が労働者を自由に解雇できる」と誤解されがちだ。しかし実際に厚労省が重点的に検討しているのは、金銭解決を言い出せる人を①労働者で②使用者に解雇され③その解雇に合理性がなく無効――の3要件を満たす場合に限る制度だ。企業が主体性を発揮する余地はない。

 

そのうえで、明文規定がない今も、実質的な金銭解決は広がっている、

と記事は指摘しています。

個別労働紛争解決促進法に基づいて労働局が開く「あっせん」と、労働審判法に基づく裁判所の「調停」「審判」がその舞台だ。

6月末の厚労省発表によれば、あっせん合意数は20年度で1390件。最高裁判所の速報で労働審判の調停・審判は20年に3167件あった。これらの9割以上で企業が「解決金」を払い、労働者は退職している。さらに労働裁判でも金銭解決は「和解」として一般的だ。

 

 

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記事に登場している「あっせん」「審判」「裁判」は

問題解決のための3大手法、とも言えそうですが、

解決のスピード、解決額の水準にはかなり差があるようで、

特に後者はあっせんがかなり低くなっています。

比較表を記事から引用させていただきます。

 

 

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雇用する側からすればあっせんで決着するのが

いろいろな意味で望ましいのでしょうが、

労働者側からすればそうもいかないでしょう。

先ほど引用した箇所にもあったように、

雇う側が主体性を発揮できるものではない、というところを

改めて認識しておく必要がありそうです。

 

現在、厚労省の検討委員会では、違法解雇された労働者に

「金銭救済請求権」を与え、訴えの提起時に

金銭解決か復職を望むか選ぶしくみを構想中、とのことです。

仮にそのしくみができた場合、解決のための金額水準として

「中規模企業に17年勤続した40歳女性で、月給23カ月分強」

という数値が記事で紹介されています。

 

私学において、労使関係がすこぶる良好、

という例は決して多くないように思います。

トラブルになったときの対応はどうしても限られてきますので、

できればその前にしっかりとコミュニケーションをとっておきたいですね。

そして万一トラブルになってしまった場合には、

早めに専門家と連携し、少しでも穏便な解決を目指したいところです。

 

(文責:吉田)

www.ysmc.co.jp