日経新聞掲載のコラムのひとつ、「受験考」。
情報発信において留意すべき点を示唆する実例が掲載されていました。
(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)
塾の郵便受けに透明なA4判の封筒が届いていた。中の紙には「2021年大学合格実績」と記されている。「国公立○名」「早慶上理○名」「GMARCH○名」……。偏差値上位の大学から順に、何人合格したかが紙面いっぱいに書いてある。予備校の宣伝かと思って封筒の裏を見ると、なんと学校からだった。
この記事の執筆者はどうやら学習塾関係の方のようで、
私立の中学・高校が実施する、
塾向けの説明会の案内について書かれているようです。
冒頭の案内は中堅校のA校からのもの。ここ数年、大学合格実績が伸びてきたことをアピールしている。中学・高校の受験生やその親にとって、どんな大学に生徒が合格しているかはもちろん関心事だ。塾にとっても必要な情報であることは間違いない。
だがA校は、予備校と同じように有名大学にたくさん合格させることが中学・高校の使命だと勘違いしていないか。そんな疑問が湧いてくる。特にA校は数年前から心を磨く教育に力を入れ始めた学校なのだ。
心を磨く教育で果たして生徒は来てくれるのか。
そういった疑問や不安を抱く私学は数多くあるように感じます。
実際、それだけでは目標とする生徒数を集められない、
という現実を経てそのように感じておられる学校もきっと少なくないでしょう。
ただ、だからといって看板に偽りを掲げてはいけない、とも思います。
各校園の強みをしっかり掲げ、それに呼応する成果をアピールしてはじめて、
全体として筋が通り、説明にも説得力が増すことでしょう。
たまたまその年度の進学実績が上がったからといって、
脈絡もなしにそのことを全面に押し出してしまっては、
むしろ学校の強みや魅力を消してしまうことになりかねません。
生徒募集における「進学実績神話」的なものを感じる一方で、
人間性や精神面の成長を第一に考える学校の募集がうまくいかないとすれば、
それは掲げる旗が悪いのではなく、教育活動や日々の取組自体、
軸足が定まっていないのではないか、と感じるケースが確かにあります。
各校園が本当に大切にしたいものを大切にして現実の活動を展開し、
そのことを誠実に訴求すればおそらく悪い正課にはならないでしょう。
もちろん、中身をきちんとしたうえで「伝え方」を工夫することもまた
重要であることは言うまでもありません。
活動全体を一本の筋道で語れる学校が、
長く支持される学校になるのではないかと思うのですがいかがでしょうか。
(文責:吉田)