先月末、大きな学校法人の経営統合のニュースが流れてきました。
日経新聞より。
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慶応義塾(東京・港)と東京歯科大(東京・千代田)は(11月)26日、合併に向けた協議を始めると発表した。2023年4月をめどに慶応大に歯学部を設け、統合する。10学部を擁する慶大は歯学部を加え、総合大学としての競争力を強化する。
記事によれば、この合併については東京歯科大が11月6日に、
慶応義塾に歯学部の統合と法人の合併を申し入れ、
という流れをたどったようです。
もちろん、ずっと以前から協議は進んでいて、
このたびその話がまとまった、ということなのでしょう。
関西に住む、文系学部卒の私には特に縁が深い話ではないので、
最初にこのニュースを読んだときには、
歯科大の学生募集が厳しくなってきたのかな…
と深読みしてしまったのですが、どうやらそうではないようです。
東京歯科大は歯科医師国家試験の合格率トップクラスの有力校で、経営状態は安定している。一方で歯科医は供給過剰が指摘され、一部の私大歯学部では定員割れが発生、定員削減も進んだ。歯学部を取り巻く環境は厳しく、慶大との統合で歯学部の価値向上を図る。
目の前のことではなく、先を見据えた統合の申入れだったようですね。
そしてこのことが、この話を前進させたのは間違いないようです。
本件については別の記事も挙がっており、そちらを見て
なるほど、とさらに感慨を深くしました。
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合併は片方の意思だけでは成りません。
今回は受け手である慶応側が乗ってくれないと意味がないわけです。
合併協議は東京歯科大側が申し入れた。関係者によると、慶応側を前向きにさせたのは東京歯科大が私立歯科大の中でブランド校として知られることだ。歯科医師国家試験の合格率も高く、学生募集も堅調で、経営状況も良好だ。
もし、すでに歯科大側の経営が傾いていたら、
合併はおそらく成らなかったでしょう。
歯科大が体力十分の法人だったことが、
両者の目指すところを同じくしたのではないでしょうか。
私学にはそれぞれ建学の精神があり、
それを尊重して経営を進めることが必須です。
その意味からすれば、法人合併というのは選択肢として考えにくいですし、
当然、自立して経営を続けることが基本線だとは思います。
一方で、少子化をはじめとして、経営環境はこれからも厳しさを増していきます。
その中で将来をどう描くのか。
万に一つの選択かもしれませんが、
仮に建学の精神や教育理念を共有できる相手となら、
このような形で「本当に大切なもの」を守ることも必要になる…
のかもしれません。
この合併で、慶応義塾には大きなメリットが生じました。
・医療系4学部を持つ総合大学は国内初
・傘下校の生徒の進路選択の幅が広がる
・医学と歯学研究で相乗効果が期待できる
また、東京歯科大の創設者である高山紀斎は1870年に慶応義塾に入塾、
現在の慶大三田キャンパス近くに、東京歯科大の前身に当たる
高山歯科医学院を開校するなど、両大学は歴史的にもゆかりが深いようです。
さて皆様はこのニュースをどんなふうに捉えられたでしょうか。
私自身、最近は合併含みのご支援も出てきており、
考えさせられること、気づきがたくさんありました。
今一度、自校園の経営の永続について、
関係各位にはしっかりとお考えいただければと思います。
(文責:吉田)