学習塾は無形サービスで、講師など人材が全てです。良い授業を提供すれば生徒が集まりますが、そのためには優れた人材を採用して育てる必要があります。校長になるまでマネジメントとは無縁だったため、様々な本をむさぼり読んだ記憶があります。
授業の質を高めるには実践が第一です。早稲田校では毎週のようにミーティングを開いては、講師を集めて模擬授業を繰り返し、仲間同士で切磋琢磨(せっさたくま)できる雰囲気づくりを心がけました。
おそらくこのへんは、私学の教学管理職の皆様も同様の行動を
心がけておられるのではないでしょうか。
教鞭を長くとっておられた教員にとって、
学校経営はその経験値とは異なるものが求められるものです。
その代表例が人事マネジメントでしょう。
自己研鑽、そして試行錯誤が管理職を育てていくものなのだろうと思います。
当時の早稲田アカデミーは開校して15年余り。歴史ある大手と比べると進学実績で見劣りしていました。知名度を高めるために社長が掲げたのが、「早稲田実業中学の合格実績でナンバー1になる」こと。最寄りの校舎を率いる私が責任者を任されました。
ただしノウハウは全くありません。手探りの中で始めたのが、現在の早稲田アカデミー目玉講座である「NN(何がなんでも)志望校別コース」の前身でした。特定の学校を志望する生徒を集め、週に1度、過去の入試問題などで徹底的に対策を練るのです。加えて志望校別の模擬試験も実施しました。
講師も含めて一丸となったことで、早稲田校の生徒数は6年で4割増えました。早稲田実業の合格者数が1位になったときの高揚感は忘れられません。
学習塾にとっては、学校以上に進学実績が求められます。
その中で目標を掲げ、達成していくことはニーズにこたえるという意味でも、
また経営上も非常に重要なことなのでしょうね。
私学では必ずしも進学実績ではないだろう、と私は常々思っています。
ただ、きらりと光る何か、は必ず必要だと思います。
それが建学の精神につながるものであり、その学校の存在価値と言えるものです。
果たして自校園がそれを追究できているか。実現できているか。
その自問自答を怠ってはいけないと思うのです。
そして、学校で忘れてならないことがもう一つ。
山本社長の持論をご紹介します。
学習塾の運営で大切なのは教室の空気です。生徒自身が本気になれば、成績は必ず上がります。そのためには講師が熱を伝えることが重要になります。早稲田校に限らず、校舎を超えた勉強会を実施して教え方を発表し合いました。
私自身も2019年まで講師として教壇に立ち続け、志望校別コースで年始の恒例になっている特訓講座を担当しました。早稲田アカデミーの最大の商品は、授業を担当する講師です。役員になっても、商品力で他の講師に負けたくないという思いが強くありました。
学校の最大の商品もまた授業、そしてそれを生み出す教員であるはずです。
授業を研ぎ澄ます努力を、私学も忘れてはならないと感じました。
(文責:吉田)