日経新聞で時折特集される記事「複眼」。
その名の通り、複数の有識者がそれぞれの視点で
トピックに関する考えを披露されています。
今回はオンライン教育について。
少し覗いてみることにしましょう。
(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)
今後のオンライン教育でどんなことに留意すべきか、
という観点で、それぞれのご意見を抽出してみました。
まずは日本オープンオンライン教育推進協議会理事長の白井克彦氏のお話。
まず学長や理事らがリーダーシップを発揮し、組織としてオンラインの活用戦略を描いてほしい。教科書的な知識を得るのはオンラインで、教室では討論などで理解を深め応用力を磨くといった役割分担ができてきた。一方で、実験や演習などは遠隔では難しいこともある。教室での授業の役割、さらには大学の構造や意義を問い直すときだ。
(中略)
教師が授業を録画し学生が好きな時間に学べるオンデマンド型をもっと上手に使うべきだ。大学の壁を取り払い、他大学の授業でも単位を認定し互換する制度をいっそう進める必要がある。
自校園の教育の全体像を示すことは確かに重要ですよね。
何ができ、何ができないか。そしてそれを実際にやるのか、やらないのか。
そろそろ全体マップを完成させたい時期、とも言えそうです。
オンライン授業の学習効果は対面授業と同等程度といわれている。しかし、学生は気を抜けないので疲労も大きい。学生が集中力を保てるよう時々休憩を入れるなど、授業の作り方を全く変えなくてはならない。(中略)学生と考えた結果、最も簡単なコツは「授業中、学生の反応をとること」だと分かった。
意見をチャット欄に書き込む、手を挙げる、小グループで話し合うといった活動を授業中、随時求めるのだ。これで学生の脱落を防げるし、教員も一人で話し続ける孤独感がなくなる。
オンライン授業をきっちり成立させるには、丁寧な指導や課題の出し方が必要だ。コロナ禍は全ての教員が授業について考え直し、IT(情報技術)のスキルを高める機会になった。教員の学び直しの機会にもなるのではないだろうか。
反応が分かりにくい、と言われるオンライン環境ですが、
だからこそ反応を「取りに行く」ことが重要なのでしょうね。
このような試みはむしろアクティブラーニングの本質に近いのではないか
とも思わされます。
3人目は女性初の公立中学校の民間人校長を経て
広島県教育長に就任された平川理恵氏です。
遠隔授業が普及すれば、学校や教室では何を学ぶのかが問われる。学校でしかできない子ども同士の学び合いやPBL(課題解決型学習)、民主的な話し合いなどが重要になる。
教員の役割は大きく変わるだろう。知識を教えるだけならパソコンやAI(人工知能)でできる。これからの教員に必要なのはPBLの運営や、子どもの思考を高度化する本質的な問いを立てる力だ。指導者から支援者(ファシリテーター)への転換ともいえる。こうした資質を養う研修を充実させていくつもりだ。
方法が変わることで本質が問われるようになる。
これは教育機関にとってむしろ歓迎すべきことなのかもしれません。
新たな教員像を明示し、それを達するための研修なども企画していかねば。
最後に登場するのは、サイバーセキュリティーが専門の、
国立情報学研究所教授・高倉弘喜氏です。
「オンライン授業にはサイバー攻撃や不正侵入のリスクが常にある」
と前置きし、その防止策、対応策を次のように述べておられます。
攻撃する側の心理を考えると、本格的な妨害が始まるのは各大学が遠隔授業の方法を確立した後かもしれない。対策として大事なのは授業を支えるシステムの単一障害点(停止すると全体が動かなくなる部分)を把握し、代替手段を準備しておくことだ。取り組みが早い大学は攻撃された場合の代替プランや予備系のシステムを用意している。
教員は最低でも、講義を必ず録画しておくべきだ。常用の会議アプリが使えなくなった場合の別の方法も考えておいた方がよい。
私は講義中にトラブルが起きたらユーチューブでのライブ中継に切り替えられるよう準備している。ある大学は講義資料を事前に配り、その説明を逐次ツイッターで流していた。ツイッターは安定性が高く、授業科目によっては予備の手段になりうるだろう。
いかがでしたでしょうか。
教育のカタチが変わろうとしていますが、
オンラインという方法が普及するからこそ、
オフラインとしての学校のあり方が問われるようにも思います。
日常に追われる毎日ではありますが、
中長期を見据えた教育活動全体の組立が必要ではないでしょうか。
(文責:吉田)