今週は新型コロナウィルスに関する話題を採り上げてきました。
最後は急遽持ち上がった9月入学のことについてです。
日経新聞より。
(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)
政府が検討する「9月入学」を巡り、私立校関係者の間から経営への不安の声が上がり始めた。日本教育学会は移行期の5カ月間に、私立大が総額1兆円の学費を失うとする見解を示した。資金難への懸念が指摘されるが、グローバル化の推進で大学の魅力を高め、国内外から学生を集める経営も求められる。
大学を中心に記事が書かれていますが、
私学の全てについて同じことが言えると思います。
この記事には一般紙としては珍しく、
私学の収入の内訳グラフも掲載されていました。
このグラフを見ますと、「授業料など」の占める割合が4分の3を超えており、
その一部が失われることの重大さが見て取れます。
小中高の場合には補助金の割合がもう少し増えますので、
大学ほどではないかもしれませんが、一方では
小中高は大学に比べ収支差額を生みにくい構造にもなっていますので、
やはり5か月分の授業料収入を失うとなればその影響は小さくないでしょう。
教育学者らでつくる日本教育学会は11日、9月入学の導入に慎重な議論を求める声明を発表し、「5カ月間の学費分の空白は、私立大学だけでも1兆円近くになる」と強調した。私立大関係者は「マンモス校では年間100億円前後の減収になる可能性もある」という。
私大の経営幹部は「国の支援がなければ、授業料の引き上げぐらいしか手はないが、保護者や学生の理解が得られるとは思えない」と話す。
学校法人会計の建付け上、あるいは学校法人の財務分析を行う際、
運転資金の半年分は常にストックしておく、
というのが標準的であるとされています。
5か月間の学費が入らないということが仮に現実化すれば、
まさにこの基準を満たしているかどうかが学校存続のカギを握ることになります。
仮に9月入学が実現する場合には、この失われた収入が
一切補填されないということは考えにくいですし、
そうあってはならないとも強く思います。
が、今回の騒動を見聞きして感じるのは、
学校経営上、ある程度の資金ストックは持っておく必要がある、
ということです。
学校経営においてはその安全性が相当脅かされない限り、
資金繰りに窮することはありません。
なぜなら、手に入るであろう補助金や保護者負担金が
「取りっぱぐれる」という危険性は非常に低いからです。
そして、原価にあたる支出が存在せず、多くが固定費であることから
支出が先行したり、突発的に支出がかさんだりすることもありません。
現金収入が定期的に実現し、支出もほとんどすべてが計画的、
という環境下では、資金繰りの心配はほとんどないものなのです。
しかし、何らかの事情で通常の営業サイクルが保てなくなれば、
当然、資金の不安は出てきます。
その際には、ストックしておいた資金がものを言います。
学校法人さんによっては、将来に向けた積立、
例えば施設の更新や退職金の支払いに備えるための
「特定資産」が十分でないケースも少なからずありますが、
そうなると、今回のような事態が起こると
資金繰りにダメージを受ける危険性が高まります。
特に、最近校舎の建替えを済ませた、といった大量の資金支出直後などは
経営リスクが高まってしまうのです。
実感できないことへの備えはなかなか進まないのが人間の弱さ、かもしれません。
が、学校は永続が原則。
将来に向けた備えの大切さを日頃から気に留め、
実際の行動を怠らないようにしていただければと切に願う次第です。
(文責:吉田)