これまでにも何度か採り上げた日経新聞の連載、
「日本型雇用、改革の行方」。
非常に興味深い結論が示されていました。
(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)
米英両国の経済パフォーマンスが高かった1990年代、経済協力開発機構(OECD)は労働市場の規制緩和を推奨しました。そこでは企業活力向上が労働者の厚生につながることが前提でした。しかし2000年代に入ると、デジタル変革や新興国の台頭で「勝者寡占化」や「生産拠点の海外移転」が進展し、米英両国では所得分配の二極化が強まり、社会や政治の分断が問題化しています。
この間、北欧やドイツなどの北部欧州諸国では、生産性や賃金が高めの伸びを示す一方で、所得分布の平等度も維持しています。これらの国では協調的な労使関係のもと、雇用・労働ルールを自主的な集団的労使交渉で決定しています。
両極端とも言える、2つのかたち。
近年は「強力なリーダー待望論」が世界的に広がっていて、
実際にそのような統治が進んでいる印象もあります。
労使間の関係も同様に、強力なリーダーシップで組織を引っ張っていく、
というような考え方が優勢であるようにも感じます。
しかし、この記事には興味深い分析結果が示されています。
OECDが2018年の報告書で示したものなのですが、
労使交渉の在り方として
(1)集権的か分権的か
(2)産業・部門間の調整度合いが強いか弱いか
で加盟国を分類し、それぞれの労働市場のパフォーマンスを比較したところ、
調整度の強いタイプが総じて優れたパフォーマンスを示していた、
というのです。
さて、貴校園の労使関係はいかがでしょうか。
難局を乗り切る際に、強力なリーダーシップが必要なことは確かにあります。
しかし、平時においても同様のものを求めるのは、
個人で事業をしているのとほとんど変わりないのではないでしょうか。
組織が持つ力を育み、それを活かすことで、
優秀な個人が1人で頑張るよりも、はるかに大きな力が発揮されることでしょう。
その際に必要なのが「調整」なのではないでしょうか。
今年に入ってから特に、弊社はこの「調整」業務を担うことが増えました。
やっていて感じるのは、本当に面倒で、厄介で、
そのうえ評価されにくい、ということです。
ですが、各法人が持つ力を活かすには、この面倒さも、厄介さも、
通らねばならないひとつの場所であるようにも思います。
教職員の力が活かされる組織を目指して、
今一度そのあり方を考えてみてはいかがでしょうか。
そして、調整ということの必要性についても、
同時に思いを致していただければ幸いです。
(文責:吉田)