元公務員としては、寂しさを禁じ得ないニュースです。
日経新聞より。
公務員の人材流出が増えている。大手転職サイトへの公務員の登録数は最高水準にあり、国家公務員の離職者は3年連続で増加した。特に外資系やIT(情報技術)企業に転じる20代が目立つ。中央省庁では国会対応に伴う長時間労働などで、若手を中心に働く意欲が減退している。若手の「公務員離れ」が加速すれば、将来の行政機能の低下を招く恐れがある。
公務員になるのもそう簡単ではないはずなのですが、
それでも転職を考える公務員が多いというのはやはり寂しいことです。
記事に掲載されていた下のグラフを見ても、
現場で最も活躍が期待される係長級のモチベーションが低いのは
非常に気になるところです。
記事には、転職の要因としてこんなことが書かれています。
19年に中央官庁からITベンチャーに転職した30代女性は「省庁で働いてもつぶしがきかない。『最後のチャンス』と30代前半までに民間転職を考える人は多い」と語る。有能な若手ほど現状の業務に疑問を感じている可能性が高い。
新卒者の減少に加え、人手不足で転職市場が活況になっていることも一因とみられる。総務省の労働力調査によると、19年の転職者数(月次平均ベース)は351万人となり、比較可能な02年以降で最多を更新した。
慶応大大学院の岩本隆特任教授の調べによると、霞が関で働く国家公務員の残業時間は月平均100時間と民間の14.6時間の約7倍。精神疾患による休業者の比率も3倍高かった。若手を中心に国会対応で長時間拘束されることや、電話対応などの雑務に時間を割かれることが長時間労働の原因となっている。
いかがでしょうか。
「つぶしがきかない」
「転職市場の活況」
「長時間労働」
といった要因は、私学の労務環境と似たところがあるとは思いませんか。
そもそも、つぶしがきかないというのは転職を前提にした考え方ですので、
それが転職の動機になるというのは順序が逆な気がします。
そうなると、やはり長時間労働という要素は
現代の若者たちにとっては「働きにくさ」につながってしまう、
非常に重要な要素と言えるのかもしれません。
各校園でも労働環境の改善が人材確保のために必須、
と言われる理由がここにあると言ってもよさそうです。
しかしながら、もうひとつ、ぜひとも気に留めておきたいことがあります。
記事をもう1カ所引用させていただきます。
「生きながら人生の墓場に入った」「一生この仕事で頑張ろうと思うことはできない」――。19年8月、厚労省の若手職員で構成する改革チームが働き方に関する提言をまとめた。20~30代の職員の約半数が業務にやりがいを感じている半面、6割が「心身の健康に悪影響」、4割が「やめたいと思うことがある」と回答した。
この要因の一つは長時間労働でしょう。
しかし、昨今の国家公務員からモチベーションを失わせている要因は
それだけではないはずです。
私はあえて、「雇用主の志とあり方」を挙げたいと思います。
なんのために働くのか。それはまさに「志」。
顧客のために働くのは当然であって、それよりも先に、
雇用する側、組織の役に立ちたいという想いあってこそ、
その職で長らく勤めようと思うもの、なのではないでしょうか。
貴校園にはどんな志がありますか。
その志に照らして、誠実に運営できていますか。
その姿を、教職員はきっと見ていることでしょう。
本当に大切な人に長く続けてもらえる組織かどうかの分岐点は、
ここだと思えてならないのです。
(文責:吉田)