働き方改革については、これまで当ブログでも多く取り上げてきています。
政府が主導するだけでなく、今や多くの企業で様々な取り組みがなされており、ワーク・ライフ・バランスの見直しは社会的に大きな関心事となっています。
企業と同様に、学校や幼稚園の現場においても教員の長時間労働が問題となっていますが、皆さんの学校や幼稚園では働き方改革は進んでいるでしょうか。
名古屋大学大学院准教授の内田良氏は、世論の高まりとは裏腹に学校における働き方改革は進んでいないと指摘しています。
さて、どんな理由があるのでしょうか?
まず、長時間労働の元凶とされる「部活動」指導の過熱について考えたい。
ちょうど昨日も私の手元には、「私的な研究会の場でブラック部活動の話題提供をしたところ、現場の教員からは堰を切ったように、反対意見や不満が噴出した」といった旨の情報が入ってきたところだ。なぜ学校は、部活動改革に後ろ向きなのか。
その理由は、端的に、教員にとって「部活動は楽しい」からである。平日の夕刻を残業代なしの無償労働で、かつ土日を割増賃金どころか最低賃金以下の労働で費やそうとも、多くの教員にとって、部活動にはその労力に見合うだけの魅力がある。
意外に思われるかもしれないが、現在、部活動顧問の過重負担について声をあげている先生方のなかにも、「部活動が大好きな(大好きだった)」人がけっこういる。それほどに、部活動は先生たちにとって魅力的な指導の一環なのである。
過剰な部活動による長時間労働で悲鳴を上げている教員の方が多いのかと思っていましたが、 意外にも「楽しい」と感じている教員の方も多いようです。
そのような教員の方々は部活動のどこに魅力を感じているのでしょうか。部活動にハマった、ある教員のコメントが載っています。
私なりに指導方法を勉強して頑張って教えれば、やっぱり勝つんですよ。そうすると、もっと勝ちたいみたいになる。だって、あれだけ生徒がついてくることって、中学校の学級経営でそれをやろうとしても難しいんですよ。でも、部活動だと、ちょっとした王様のような気持ちです。生徒は「はいっ!」って言って、自分に付いてくるし。そして、指導すればそれなりに勝ちますから、そうするとさらに力を入れたくなる。それで勝ち出すと、今度は保護者が私のことを崇拝してくるんですよ。こうなると、土日つぶしてもいいかな、みたいな。
授業と部活動のどっちが本業やねん・・・、と思わずツッコミたくなるようなコメントですが、まさにこれが本音なんでしょうね。
部活動に逃げてしまっており、自己中心的で完全に視野が狭くなってしまっているように思います。
このような教員が多く、本業である授業に支障を来しているのであれば、部活動の在り方を根底から変えるべきだと個人的には思います。
部活動の主役は教員ではありませんしね・・・
もちろん問題は部活動だけはありません。
とある先生は、「近年の長時間労働批判は、子どものために夜遅くまで頑張っている先生たちに失礼だと思う」と、率直な気持ちを私に語ってくれた。
この発言内容にも驚かされたが、それ以上にその先生からは、問題意識がほとんど感じ取られなかったことが驚きだった。夜遅くまで頑張ったことが、子どもの笑顔につながっていく。純粋な気持ちで「子どものため」と信じて仕事を頑張ってきたことが、働き方改革にとっての障壁になっているように見えた。
言うまでもないことだが、全教員が上記のような考え方をもっているわけではない。
ただ、夜遅くまで「子どものため」に職務に没頭する様子は、教師のあるべき姿と美化されてきたことはたしかであり、それに多くの教員が巻き込まれていることは否定できない。こうなると、どれほど教員の仕事が増えていっても、それをこなしていくことが正当化し讃えられ、長時間労働の問題は見えないままとなる。
「子どものため」に時間を惜しまず頑張ることは素晴らしいことかもしれませんが、そこにこだわり過ぎることで思考停止に陥ってしまっているように感じます。
決して手を抜くことを推奨しているわけではなく、まずは所定労働時間内に終了させることを第一に考えるべきです。
それでも長時間労働が恒常的に発生する場合は、必ずどこかにムリ・ムラ・ムダが生じていますので、教員個別の問題としてではなく、学校全体の問題として早急に是正をするべきだと思います。
また、「あの先生だけは特別」といったような例外も作るべきではありません。例外を設けた時点で組織全体の取り組みではなくなってしまいます。
学校現場の長時間労働の発生にはいくつかの原因があるようですが、いずれにせよ長時間労働による弊害は必ずあります。
過労死や精神疾患などの事案も顕在化しています。
また、家族や友人と過ごす時間、趣味や余暇を楽しむことも人生にとって大きな意味がありますので、そこを疎かにすることはできません。
教員が子ども達のために頑張ることは当然素晴らしいことですが、教員として本当にあるべき姿はどのようなものかについて、視野を広げて考えてみていただければと思います。
(文責:木村)