高校や大学を卒業すれば、ほとんどの学生は就職して社会人として働くことになりますが、実際は在学中にアルバイトとして多くの学生が既に社会で働いています。
ただし、「ブラックバイト」に代表されるように、労務に関する様々なトラブルに巻き込まれる事例も多くあるようです。
労働法に関する知識が全くないと、初めてのアルバイトで過酷な労働やサービス労働を強いられても、「アルバイトってこんなもんなのかな・・・」と何となく受け入れてしまうこともあるかもしれません。
また、これがエスカレートすれば学業に支障を来すことにもなりかねません。
私は10年ほど前に某大手ファーストフードチェーンに勤務していた頃は、高校生を含む多くの学生を雇用していました。
「ブラックバイト」と正反対の「ホワイトバイト」でしたから、労働基準法違反が発生することのないようにアルバイトの労務管理をきっちりと行っていました。
ただし、学生には労働基準法の知識はないので、採用して雇用契約を交わす際には、必ず契約書の内容や労働基準法の大まかな説明を行っていました。
また、採用時の説明だけで理解してくれる訳がありませんので、法定労働時間、休憩時間、休日などの知識は定期的に確認を行っていましたが、なかなか覚えてくれなかったり、当人のうっかりミスによる違反が発生することもしばしば・・・
「労基法の基本的なことくらい、学校で教えておいてくれたらいいのに・・・」と思うこともありました。
そんな私の要望に応えて!という訳ではないに決まっていますが、厚生労働省が、労働法教育プログラム「『はたらく』へのトビラ~ワークルール 20のモデル授業案~」を作成し、全国の高校などに冊子を配布したそうです。
このプログラムには労働法に関する教育方法として20のモデル授業案が掲載されており、対象教科も、公民科だけでなく、地理歴史科、家庭科、総合的な学習の時間、特別活動など、さまざまな教科で活用できるようになっているとのことです。
是非とも各校で活用していただきたいと思いますが、この冊子の冒頭には以下のような記載があります。
教育を担う側について見ると、社会保険労務士等の労働法や制度に詳しい専門家が学校教育に関わってくださる場合もありますが、各学校で必ずそれらの専門家と協働できるとは限りません。また、主として高等教育を担っている教員の方々については、大学時代に専攻として学んだ方以外は、労働法に詳しくない場合が多いと思いますので、労働法に特に詳しくない教員の方々でも取り扱い易い授業案も用意していますし、「教員と生徒とで一緒に学ぶ」というスタンスでぜひ取り組んでいただきたいと思います。
そもそも、一般社会人の方々でも、労働法や制度について詳しいとは限らないわけですから、例えば生徒が学校で学んだあと家庭で話題にしてもらい、家族で労働法や制度について関心を持っていただくようなことも期待したいと思います。
確かに、教員の方々や一般的な社会人でも労働法について詳しく知っている方は少ないかもしれませんね。
ただ、労働法を知らない=労働法を気にしていないことが恒常的な長時間労働を招く一因になっている可能性があるのではないかと思っています。
このプログラムに掲載されている授業案を参考に、子どもだけでなく教員の方々も、働く上のルールである労働法をしっかりと認識する必要がありそうですね。
(文責:木村)