寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

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早大、非常勤講師の契約「5年上限」を撤回

少し前の話題ですが、私学にとっては重要性の高いニュースです。

朝日新聞より。

 

早大、非常勤講師の契約「5年上限」を撤回 労組と和解:朝日新聞デジタル

 

まずは記事をそのまま引用してみましょう。

 早稲田大学が、非常勤講師の契約上限を「5年」とした規定を撤回したことがわかった。撤回を求めていた労働組合と東京都労働委員会で和解した。短期契約を更新しながら働いてきた非常勤講師が雇い止めになる恐れがあったが、解消された。

(中略)

 問題の発端は、労働契約法の「5年ルール」ができたことだ。有期契約で働く人でも、契約が繰り返し更新されて通算5年を超えた場合、無期契約への転換権が与えられるというもの。2013年4月に施行され、18年4月から順次権利が発生する。

 ところが、早大や大阪大など、非常勤講師との契約が無期になることを嫌う一部の大学では、「5年ルール」を免れるために、あらかじめ5年上限の規定をつくる動きがあった。早大は13年3月に5年上限の規定を新たにもうけた。反対する組合が大学を労働基準法違反で告訴するなど、対立が激しくなっていた。

 和解協定によると、14年3月31日以前から働いている非常勤講師は「5年上限」がなくなり、5年を超えて働くと無期契約への転換権が生まれる。組合によると、約3千人が対象になるという。ただし、14年4月以降に働き始めた講師は、10年の上限が残る。今後、組合は10年上限の撤回も求めていくという。早大の広報担当者は「現時点で包括的に合意できた事項について和解した。引き続き真摯(しんし)に対応していきたい」とコメントした。

非常勤教職員との契約については、記事中にもある労働契約法の新条項ができてから、いろいろと頭を悩まされている学校も多いと思います。

そのような中で「5年上限」のルールを設定した早稲田大、和解でそのルールが撤回されたとのこと。

これは他校に対する影響も決して少なくないのではないでしょうか。

 

これまで学校現場においては専任・常勤・非常勤という3本柱で雇用を成立させてきた経緯があります。

そして、専任はいわゆる「期限のない契約」、企業でいう正社員として契約されますが、常勤及び非常勤は基本的には1年契約であり、これを最大3年程度まで更新する、というのが実務上の取扱いとしてよく耳にするパターンでした。

ただ、中には毎年更新が5年を超えて継続されるケースも存在していると思われますし、仮に当該教職員さんを専任として雇用するとなると、人件費の大きさがあまりにも異なるために躊躇される、といったこともあったでしょう。

そこには専任・常勤・非常勤の待遇に大きな差があることが前提となっており、労働契約法による転換義務のインパクトが必要以上に大きくなっていることが考えられます。

 

個人的な見解ではありますが、将来に向け、学校の雇用形態は現在のままとはいかないように感じています。

論点の一つは上記を含めた「同一労働同一賃金」の考え方。

そしてもう一つが「雇用期間の有無」の考え方です。

 

前者は専常非の役割分担や責任等の負荷と、賃金単価設定のバランスが見合っているかという点が気になるところです。

専任の待遇が非常勤に比べると良すぎる、あるいはその逆、といったふうに学校によって事情は異なると思いますが、どちらのケースであっても全体としての整合性が不十分という意味では是正が必要でしょう。

 

後者は採用から定年までの各教職員のキャリアパス(役割-職位-評価-育成-給与の連関)を考えていくことが重要ではないか、と思います。

そして専任採用であるにもかかわらず、新規採用後しばらくは常勤として単年度契約しか結ばない、という学校にはそれなりの人材しか集まらない…という悪循環ともいえる業界ルールは、そろそろ見直しの時期に差し掛かっているのではないでしょうか。

 

組織づくりは学校にとって最重要と言っていいテーマです。

ぜひ腰を据えた取組を実践していただきたいと願っております。