新たな週が始まりました。
本日はいわゆる「労働経済白書」公表のニュースを採り上げます。
厚生労働省HPより。
「平成26年版労働経済の分析」を公表 |報道発表資料|厚生労働省
「労働経済白書」は、雇用、賃金、労働時間、勤労者家計などの現状や課題について、統計データを活用して経済学的に分析する報告書です(同HPより)。
今回で66回目の白書とのことで、蓄積データもかなりのものになるのでしょうね。
ちなみに今回の分析テーマは「人材力の最大発揮に向けて」。
学校現場の労働環境について何かヒントはないか、と思ってたどり着いたニュースなのですが、むしろ教育内容の方に近いテーマであることに気づきました。
それはさておき、白書のすべてに目を通すのは時間がかかりますので、まずは概要をチェック。
簡潔にまとまっているので、ざっと内容を押さえるには参考になります。
さらにこの資料の1ページ目には、概要のサマリー、といった感じのまとめがなされていますので、時間がなければここだけ見ておいてもいいかもしれません。
ただ、皆様にはせっかくこのブログをご覧になっていただいておりますので、その後に並んでいるキーワードだけでもこちらでまとめておきましょう。
○ 着実に改善した雇用情勢
2014年1~3月期には完全失業率が3.6%、有効求人倍率が1.05倍となるなど、雇用情勢は着実に改善しており、人手不足感が高まっている。
○ 大幅に増加した雇用
今回の景気回復局面は、過去の景気回復局面と比較して、所定外労働時間だけでなく就業者数が増加したことが大きな特徴。
○ 人口に占める正規雇用労働者の割合
人口に占める正規雇用労働者の割合はそれほど変化しておらず、女性については、2003年から2013年にかけて、各年齢層での正規雇用の割合が高まってきている。○ 賃金引上げの動き
2013年の現金給与総額は持ち直しの動きをみせている。さらに、2014年の春季労使交渉において、定期昇給相当分の維持に加え、ベースアップを含めた賃金の引上げを行う企業が多くみられた。
○ 賃金の上昇を可能とする環境の整備に向けて
実質賃金の上昇のためには労働生産性を高めていくことが重要である。さらなる賃金の上昇のために、IT資本への投資に加え、能力開発等を通じた人的資本の蓄積による労働の質の向上を図っていくことが必要である。
○ 就労意欲を引き出す人材マネジメントと企業パフォーマンス
労働者の就労意欲が高いと考える企業では、労働者の定着率や労働生産性が高いと考える割合が高く、企業の収益性を示す売上高経常利益率も高い傾向がある。
○ 就労意欲を高める人材マネジメント
労働者の就労意欲が高いと考える企業では、広範な人材マネジメントを実施している。
○ 我が国の職業キャリアの現状
男性では、50歳台半ばまで約半数が初職から離職することなく就業し続けている。女性では、初職から離職せずに就業し続けている者は男性より少ない。継続就業率は、特に女性で、近年上昇している。○ 円滑な労働移動に向けて
比較的所得が低い層と高所得者層で2回以上の転職経験者が多い。転職希望理由をみると、高所得者層では「知識や技能を生かしたい」が多い。自己啓発を行っている者の方が高い所得を得ている傾向がある。非正規雇用から正規雇用へと移行する割合が高い産業として、学術研究,専門・技術サービス業、医療,福祉、教育,学習支援業、建設業等があげられ、職業(詳細分類)では営業職、看護師、自動車運転従事者等があげられる。
年齢が若いほど正規雇用への移行可能性が高く、また学卒後の初職の形態、前職での経験、公的助成による学び直し等が、正規雇用への移行に影響している。
(下線、太字は筆者による)
特に興味深かったところに下線を引いておりますのでご参考までに。
そして、2か所太字にしているものがありますが、これは学校関係の皆様に気づきの多い点ではないか、と感じております。
前者は正規雇用への意向がなされやすい産業、という切り口で教育業が採り上げられており、事実、非正規者が転職後、正規に就いた割合は全産業区分中2番目に高くなっています。
しかしこの点について、私自身、必ずしもプラスイメージだけではとらえきれない側面があると考えています。
その理由はひとつに「その分だけ非正規雇用(常勤あるいは非常勤)で初任者を扱うケースが多い」点、もうひとつに「離職率も同様に高い水準である」点が挙げられます。
経験を積むまでは職場を変わりながら身分を安定させていく…という、やや歪な雇用形態が業界標準になっているのではないか、とすら感じる次第です。
そして後者については、同項目の解説中にこのような記述があります。
『公的助成による自己啓発への支援としての「大学・大学院の講座の受講」が最も大きなプラスの効果を持っている』
学び直し、ということがここでは重視されているわけですが、タイミングのことを横に置いておくとすれば、教育機関における教育が雇用形態にも大きな影響を及ぼしているとも言えるのではないでしょうか。
学校の存在意義はこんなところにも見出せるのかもしれませんね。
以上、やや長くなってしまいましたが、雇用をめぐる環境についてはこのような資料で確認されるのが有用だと思います。ぜひご参考になさってください。