寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

学生への経済的支援の在り方について

今日は文科省発表のレポートをご紹介します。


学生への経済的支援の在り方について(中間まとめ)


その名の通り、主に大学生に対する経済的な支援制度について、国の方向性をまとめたレポートになっています。

主たる対象は大学とはいえ、高校や中学を含め、また公私ともに考え方の整理という意味では有用なレポートだと感じました。

参考までに、今後国が想定している具体的取組を抜粋してみます(ただし筆者による一部加工あり)。

○無利子奨学金の拡充(有利子から無利子へ)

○社会人への奨学金充実(学び直しへの無利子奨学金による対応)など、多様な学びのニーズへの対応

○延滞金の賦課率の見直し(率の引下げ、段階的な賦課方式の導入、延滞金総額についての上限の設定など)

○減額返還制度や返還期限猶予制度の柔軟な運用(制限年数の見直し、基準額の緩和等)

○より柔軟な「所得連動返還型奨学金」導入に向けた準備(対象者の範囲、対象となる奨学金の範囲、一定期間経過後の債務免除の仕組み等について検討、システム開発の準備)

○授業料の減免等を引き続き拡充(ただし授業料減免制度も含めた給付的な支援策全体の制度設計について整理し直すことも将来的課題となりうる)

奨学金を含めたその他の経済的支援については、目的・ターゲット層に応じた制度改善(例として、特に経済的困難で優秀な層に対する給付的支援の充実、卒業時の返還免除について対象や分野などを検討。なお制度改善を検討する際には、学生等の教育効果という視点も加味し、その実施方式についても十分検討が必要)

なお、この報告書のp.11に掲載されている「制度設計に係る概念図」は特に頭の整理にもってこいです。

学生生徒に対する経済的支援策がひとつの課題になっているという私学も確かに存在しますから、「奨学」「育英」という2つの軸で制度を整理すると目的にかなう制度を設計できるのではないでしょうか。


ちなみに、この報告書では脚注扱いになっていますが、このような問題が起こる背景として、世帯収入と学費の関係が変化している点はぜひ押さえておきたいところです。

以下、データを引用しておきます。

●二人以上の世帯のうち勤労者世帯の1 ヶ月の実収入の推移

  H12 56.3 万円 → H24 51.9 万円(総務省「家計調査」)

●大学の授業料の推移

  <国立大学>H12 47.9 万円 →H24 53.6 万円(公立大学もほぼ同推移)

  <私立大学>H12 79.0 万円 →H24 85.9 万円

このデータから授業料÷世帯収入を計算してみると、

  <国立大学>H12 0.85→H24 1.03

  <私立大学>H12 1.40→H24 1.66

となり、その負担感は概ね2割増し、といったところです。

家計と学費の関係性については、特に私学は意識しておく必要がありそうです。


(文責:吉田)

お問い合わせセミナーのご案内