寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

宿題を見直す 「一律」を廃止、家庭主体に

宿題のあり方については、各校園、各教員、各家庭によって

それぞれ考え方が異なるかもしれません。

そんな宿題について、とある工夫をされている実例が

掲載されていましたので、ご紹介します。日経新聞より。

 

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(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

この記事は岐阜市で公立小学校の校長を務めていらっしゃる、

藤田忠久さんからのご寄稿です。

個に応じた学びの実現、教員の働き方改革などを背景に、

実際に宿題の見直しをされたそうです。

 

まずはその呼び名を変えたそうで、この小学校では本年度から

「宿題」という言葉は使わず、「家庭学習」と呼んでおられます。

そのうえで、「家庭学習の手引き」をつくり、家庭に配布。

学年ごとの学習の目標などを示し、画一的な一律の課題を出すことを避け、

児童一人ひとりが「自分の学習」に取り組むよう仕向けておられます。

 

 

家庭学習の主体は児童本人や保護者である。各家庭で考えた塾や習い事も家庭学習の一つと捉えてよい。個人用タブレット端末と、岐阜市教育委員会が導入した学習支援ソフトや算数のデジタル教材も活用できる。

 

上記引用の冒頭、家庭学習の主体は「児童本人と保護者」であると

言い切っておられます。ここが重要なポイントだと感じました。

宿題は学校発信となりますが、家庭学習はまさに家庭が主軸。

そう考えるだけで、宿題の意味付けは変わってくるように思います。

 

「勉強イコール座学」というイメージにとらわれないよう、授業に関する内容だけでなく児童の興味・関心に基づく調査や観察、夢や目標につながるような実技の練習なども家庭学習の例に挙げた。

「体験活動は対話や記録等の言語化によって学びへと発展(する)」とも付記し、メモを残すことなどで体験を自分らしい学習に発展させる道筋も示した。

 

宿題ではなく家庭学習と捉えることによって、その幅も当然広がります。

宿題であれば、各教員が自らの担当科目に縛られがちなところ、

その弊害も防げそうな気がします。

 

藤田校長が宿題の見直しに踏み切った第一の理由は、

社会の急激な変化を乗り越え、未来を切り開いていくために、

その学力基盤として「自ら進んで学ぶ力」を養うことが大切、

と考えたことにあるそうです。

 

そこに加えて、文部科学省が2022年2月に出した

改訂版「働き方改革事例集」の中で、

「家庭学習を自主的な取り組みを中心にして目的にあった最小限の量としたり、

 量より質を重視する出し方に改善したりすることで

 1日20分以上の業務時間の削減ができる」

と例示されており、教員の業務軽減にも資することが

その背中を押したようです。

 

働き方改革は勤務時間の削減より、教員が本来すべきことをできるようにするのが目標だろう。その観点で担任業務を見直すなら、担任は宿題のノートより目の前の子どもに向き合うべきだ。子どもとの対話・協働を通じて児童理解を深めることこそ必要だ。

 

さて、貴校園でも宿題について議論されていらっしゃいますでしょうか。

ひょっとすると、こういった工夫をしてみたい、という声は

以前よりも多く上がるようになっているかもしれませんね。

 

ただ、実際にこれまでと変化させるとなった場合、大きなハードルは

「各家庭の受け止め」ではないでしょうか。

弊社が代行する学校評価アンケート等の集計結果の中では、

まだまだ「もっと宿題を出してほしい」といった保護者の声も

少なからず見られます。

要するに、家庭の教育力が落ちてしまっていて、

学校に頼らざるを得ないケースが多くあるということでしょう。

 

その意味で、今回の岐阜小学校の例は参考になります。

学年ごと、あるいは個人ごとの目標設定により、

自ら課題を見つけられる力を付ける、

そのためのサポートのみを学校が行う、

という形はどの校園においても実践可能なのではないでしょうか。

ぜひともご検討いただければと思います。

 

(文責:吉田)

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「日本を決定した百年」、教育が要

教育という事柄の重要性を改めて感じる記事でしたので、

皆様とも共有させていただきます。日経新聞より。

 

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元首相・吉田茂著「日本を決定した百年」(1967年刊)を久しぶりに読み返してみた。エンサイクロペディア・ブリタニカに英文で掲載した寄稿を和文でとりまとめ、加筆したものである。キーワードは勤勉と冒険心と柔軟性などだが、最も印象深かったのは、吉田が太平洋戦争によって灰じんに帰した日本再建の要は教育にあると確信していたことだ。

 

上記書籍を私は読んだことがなく、自らの無学を恥じているのですが、

記事によりますと、ここには教育を特段重視する吉田茂の言葉が

以下の通り多く並んでいるそうです。

 

「維新の大業は、多くの教育ある国民の手で押しすすめられなければならない

 というのが、明治の指導者たちの気持ちであった」

 

「全国に学校をおこすが、政府には小学校設立に補助金を出すだけの

 余裕がなかったので、大部分国民の負担で小学校をつくっていった。

 生活に追われていた民衆はなかなか子供を学校にやろうとしなかったが、

 政府は就学率を高めるために努力を惜しまなかったし、

 地方の地主たちは、多額の金を寄付して学校の設立を助けた」

 

「現在でも田舎を旅行すると、

 小学校の校舎が村で一番よい建物であることが多い」

 

「政府に参加しなかった知識人の多くは私立学校をつくって教育にあたった」

 

最後の一文、私学の成り立ちを思い起こさせて熱いものが胸をよぎります。

おそらく貴校園も、崇高な建学の精神によって創立され、

これまでの歩みを進めてこられただろうと思います。

 

さて建学から数十年、それ以上が経過した現在において、

当時の想いはどれほど貴校園に残っているでしょうか。

当事者がどんどん変わっていく中で、ひょっとすると、

建学の精神や教育理念が「額に入った言葉」になってしまっている、

というケースも決して少なくないのではないでしょうか。

次の時代をつくる子どもたちを誠心誠意、育てていくのだという

強い想い、信念が私学には特に求められるような気がしてなりません。

 

この記事は以下の文で閉じられています。

教育という大切な事業に携わる皆様方に、

改めて熱い想いを自らの中で呼び起こしていただければ幸いです。

 

令和も5年になった。政策の鍵は、官も民も、思い切った教育投資だ。試行と混迷の平成時代にかかわった私たちが後世のためになすべきことは、各分野にわたって、明日の日本をつくる人材を育む環境の整備に尽きる。

 

(文責:吉田)

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物価高、子どもの活動に影

物価高が教育に及ぼす影響は決して小さくないのかもしれません。

日経新聞より。

 

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物価高が続くなか、家庭でスポーツクラブや音楽教室といった子どもの学校以外での「体験活動」を減らす動きがある。民間調査では所得が低い世帯ほど傾向が顕著で、年収300万円未満では3割が「体験活動の機会が減った」と答えた。調査した団体は「多様な活動は成長にとって重要だが、経験の格差が広がる懸念がある」と指摘している。

 

この調査は2022年10月、子どもの学習支援に取り組む公益社団法人が、

学校以外でのスポーツや文化芸術活動などを

「体験活動」として実施状況を調査したもので、

小学1~6年生の子どもがいる保護者約2千人が回答しています。

 

世帯年収300万円未満を「低所得世帯」と定義したうえで、

物価高の影響で体験活動の機会が減少したと答えた割合は

低所得世帯で30.8%を占めました。

同様に答えた割合は世帯年収300万~599万円で23.8%、

同600万円以上で13.7%となっており、

所得が低い世帯で体験機会の減少がより顕著でした。

 

下のグラフをご覧いただきますと、所得階層による影響の大きさには

はっきりと差がある状況が見て取れるように思います。

 

 

私学に子どもが通う世帯は比較的裕福な家庭が多い、

というふうに考えることも可能かもしれませんが、

特に高校では就学支援制度が充実してきている昨今、

必ずしも家計に余裕のないご家庭も

私学在籍者の中にいらっしゃることと思います。

 

私学では学校内での活動にしっかり注力することが重要ではありますが、

各家庭での教育活動、学校外部での教育活動にも目配せをして、

学内での活動にもそれらを反映できればなおのこといいかもしれませんね。

物価高は各家庭に少なからず影響を及ぼしていることを、

私学として忘れてはならないと感じた記事でした。

 

(文責:吉田)

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プログラミング 小中高生、習熟に差

差の要因をしっかりつかんでおく必要がありそうです。

日経新聞より。

 

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文部科学省は3日までに、プログラミングなどの「情報活用能力」について小中高生を対象に初めて実施した調査結果を公表した。プログラミングの理解やデジタル端末の基本操作の習得では、児童生徒の間でばらつきがみられた。同省は2022年度中に詳しい分析結果をまとめ、教育現場での指導に生かす。

 

この調査は全国の国公私立の小学5年、中学2年、高校2年から抽出した

計約1万4千人を対象に、2022年1~2月に実施したものです。

端末の基本的な操作やインターネットでの情報の収集・整理、

データ活用などの分野から出題し、オンラインで回答されています。

 

2020~22年度に小中高で導入された学習指導要領では、

情報活用能力を「学習の基盤となる資質・能力」に位置づけました。

それだけこの分野に力を入れるという意向であると考えられます。

そして、文科省は定着の度合いを継続的に測るため、

小中高共通の問題で初の調査をこのたび実施しました。

 

成績を基に児童生徒のレベルを9段階に分類したところ、高2で最も高い「プログラムの実行結果を想定しながら修正できる」程度の力がある生徒は9.7%だった。一方、指定のフォルダへファイルに名前を付けて保存できないレベルの生徒も16.1%いた。

 

個々の興味によって、学習の成果に差が生まれることは

それなりに自然なことと言えるような気がします。

が、それ以外の要素、例えば学ぶ環境そのものに大きな差があったり、

教える側の体制に大きな差があったりすることで

学力差が生まれているのであれば、懸念される結果だと感じます。

 

さて、貴校園でのプログラミングの習熟度はいかがでしょうか。

論理的思考につながるとされるプログラミングは、

今後に向けて重要性が小さくなることは考えにくいですね。

その習熟度を適切に評価しながら、よりよい学びを実現するための

方策を開発していっていただきたいと思います。

 

(文責:吉田)

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部活動地域移行の指針、達成目標「3年」見直し

ずいぶん後退したな、という印象です。

日経新聞より。

 

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スポーツ庁文化庁は(2022年12月)27日、公立中学の休日の部活動を地域団体や民間事業者に委ねる「地域移行」を見据えた部活動運営に関する指針を公表した。11月に作成した指針案で「2025年度末」としていた地域移行の達成目標は設定しない方針に転じ「地域の実情に応じて可能な限り早期の実現を目指す」とした。

両庁は「自治体から3年間での地域移行は困難との指摘があり、必要な見直しをした。地域移行を進めることに変わりはなく、国として支援していく」と説明した。

 

私学ガバナンスといい、この部活動のことといい、

ぶち上げた後の尻すぼみ感と言いましょうか、

政策の実現に向けた意気込みを感じないのは私だけでしょうか。

今回の指針のポイントを改めて下の表でご覧ください。

 


今回の指針について、もう少し具体的な内容も含めてみておきますと

概ね以下の通りです。

  • 指針案で「改革集中期間」としていた23~25年度は「改革推進期間」に
  • 地域移行の体制整備が困難な場合は、運営主体を学校にしたまま地域と連携し、外部指導者として地域人材を配置
  • 民間事業者などが担う部活動を「地域クラブ活動」と表現し、関係者間の連携体制の整備や指導者の質と量を確保することなどを促す
  • 平日と休日にそれぞれ週1日以上を休養日とする現行ルールも適用
  • 地域での指導を希望する教員の兼業を認める
  • 希望しない教員が強制されないように意思を確認する
  • 学校部活動では、自治体に部活動指導員の積極的な配置を求め、教員が休日の指導や大会の引率に従事しない体制を構築する

 

さて、貴校園では今後の部活動の運営について、

何か具体策を想定されていらっしゃいますでしょうか。

上記指針は主に公立中向けではありますが、

私学や高校も実情に応じて参照することが求められています。

また、教員の負荷という意味では、公私の差はそれほどないとも思います。

 

部活動は他校園との関係性が自校園内で完結する活動よりも強いため、

自らのみで何とかできることには限りがあるかもしれませんが、

それでも貴校園としての方針と具体的な行動について、

早めにご検討いただければと思います。

 

(文責:吉田)

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教員休職「心の病」最多に 昨年度

心配な記事が昨年末の日経新聞に挙がっていました。

貴校園の状況はいかがでしょうか。

 

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2021年度に公立小中高校と特別支援学校で精神疾患を理由に休職した教員は20年度より694人多い5897人で、過去最多だったことが(2022年12月)26日、文部科学省の人事行政状況調査で分かった。全教員に占める割合は0.64%(156人に1人)となる。精神疾患で1カ月以上の病気休暇を取得した人を合わせると計1万944人で、初めて1万人を超えた。

 

まずは下のグラフでその推移を見ておきましょう。

上記引用文にも、また下のグラフにも書かれている通り、

公立校を対象とした統計ですが、おそらく私学でも同じか、

あるいはもっと厳しい状況なのではないかと推測されます。

 

 

精神疾患の休職者はこの15年ほど、5千人前後で高止まりしており、

2021年度の統計を男女別に見た場合、

女性が3,491人、男性2,406人となっています。

また年代別に見た場合には、

20代が1,164人、30代1,617人、40代1,478人、50代以上1,638人で、

2020年度比の伸び率は20代が最も高くなっており、

若手ほど精神疾患による休職の割合が高い傾向が出ているそうです。

新型コロナウイルス対策で忙しくなり、

教員間でコミュニケーションを取る機会が減ったことも影響した、

というのが文科省の見立てのようです。

 

教員採用自体が厳しい現況において、休職に至るような状況を

極力減らすことが学校経営上喫緊の課題かと思いますが、

少しヒントになりそうなのが以下の記述です。

 

どの年代でも赴任から2年未満での休職が目立ち、学校に慣れるまでに経験豊富な同僚が支える体制が必須となっている。

富山県の公立小のベテラン教員によると、2022年春に配属された新人2人のクラスが、児童の私語などでいずれも授業が成立しなくなった。学校は、児童を巡るトラブルの情報共有を徹底する対策を取り、学級運営について教員の話し合いを重ねて新人を孤立させないように腐心した。

現在、1クラスは落ち着きを取り戻しつつあるという。ベテラン教員は「最初から学級運営のノウハウを持つ若手はいない。一人で悩ませないことが重要」と強調する。

 

教員とて一人の人間ですから、周囲の支えはやはり必要でしょう。

ましてや、新任となればなおのことです。

若手の先生方、新たに貴校園に着任された先生方や職員さんには、

ぜひとも周囲が言葉と態度でサポートしてあげていただきたいと思います。

そしてそのような風土を生み出す校園であっていただきたいと、

強く願っております。

 

(文責:吉田)

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2023年 法律・ルールこう変わる

新年1月、ということで、今年予定されている法令の変更について、

改めて押さえておきたいところですよね。

先日の日経新聞にまとめの記事が挙がっておりましたので、

皆様と私の復習のために紹介させていただきます。

 

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まずは、日経新聞の記事についていた今年のルール改定の一覧を

ご覧いただきましょう。少々文字の小さな画像となりますが、

1年をざっと押さえていただくのにとても有用だと思います。

 

 

記事では、経済安全保障をめぐるルールや、

電子化・デジタル化に関する改定に焦点が当てられていますが、

私自身が特に注目しているのは、

4/1施行の労働基準法と、10/1施行の消費税法です。

 

まず労働基準法の改正については、月60時間以上の時間外労働について

賃金の割増率を50%とせねばならないというルールが、

いよいよ企業規模を問わずに適用されるようになります。

 

現状、私学における残業実態は他業界以上に厳しい状況にあると感じますが、

時間外労働への対価の支払いという意味では、その実態以上に、

法令違反状態になっているものも多いと感じております。

今年4月からは月間労働時間が特に多い教職員の皆様には

その時間外手当の支給要請が強まることをぜひ念頭においていただき、

その支払いが可能になる財務体質の実現を図っていただければと思います。

 

そして消費税法の改正については、私学よりも一般企業への影響が

取り沙汰されているところではありますが、

私学の中で消費税の申告をされている法人さんにおいては、

取引の相手先が発行する請求書等がインボイスにあたるかどうかを

きちんと確認する必要が出てくることになると考えられます。

学校法人によっては、消費税の納税負担がそれなりに大きいケースも

当然あると思いますので、ぜひともこの機会に、

法人の納税額やその要因についてもご確認いただきたいところです。

 

(文責:吉田)

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