寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

緩和進め選択肢多様に

先週から続けて採り上げている日経新聞の連載「教育岩盤」。

本日もその中からお届けいたします。

 

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業界の外から新たに業界内に入ってくる人材は

それだけで貴重だと感じている私にとって、

今回ご紹介する小林りん氏は敬意の対象なのですが、

すでに業界内にいらっしゃる方には必ずしもそう映らず、

むしろ参入の壁を感じることが多いというのが世の常なのかもしれません。

小林氏は現在、長野県で全寮制国際高校を運営しておられますが、

参入時の最大の壁は何だったかと問われ、こう答えていらっしゃいます。

 

長野県知事の下に置かれる私学審議会の承認を得ることだ。

 県内の私学関係者で構成する審議会の承認がないと

 新しい私学はつくれないと私立学校法で決まっている。

 教育内容には自信があったが、12年の最初の審議会では

 法人設立を承認されず驚いた。

 外資系企業出身者で教育畑でない私の経歴への不信感があったようだ」

 

学校は一度設置されれば社会的に影響が大きいですから、

その審査は慎重であるべきで、当然教育の質についても厳しく評価される、

というのは当然のことでしょう。

 

ただ、一見妥当性があるように見えるこの審議会の承認という手続は、

当該学校が参入した後にはライバル関係になるとも言える

他私学関係者で審議会を構成することが果たして妥当なのか、

それが質を担保することになっているのか、少々疑問も感じます。

この点は小林氏も記事の中で同様の指摘をされています。

 

一方で、私の耳にはあまりいい話が届かない行政側には、

味方が多くいてくれて助かった、と小林氏はおっしゃっています。

外国人教員が日本の教員免許を取得する際、

またIB(国際バカロレア)認定校としての履修単位の制約を超える際、

どうやってそれを乗り越えたのか、という小林氏のお話です。

 

「乗り越えられたのは、行政に大勢の理解者がいたことが大きい。

 特別免許状の審査では長野県教委が煩雑な手続きを親身に指南してくれ、

 審査を担当した教育学者も本校の教育方針に理解があったことで、

 対象者全員が免許を得られた」

「履修単位については親交のあった文部科学官僚に相談したところ、

 バカロレアの一部科目を指導要領の単位としても算定できる

 制度改正に尽力してくれた。行政に対して身構えず、

 情熱をもって働きかければ多くの人が味方してくれる」

 

小林氏は「日本の教育はどうしたら変えられるか」という問いに、

私学の強みを踏まえてこう発言され、この記事が締められています。

このような人材を私学が受け入れられることこそ、

私学が末永く存在意義を保ち、高めていけることなのではないでしょうか。

 

「今の教育が百点満点だと思う人はあまりいない。

 万人のための公教育はいきなり自由化できないから、

 私学を通じて多様な選択肢を増やすことが大事だ。

 国や自治体は新たな取り組みを少しずつ認め、

 風穴を開ける後押しをしてほしい。

 風穴が増えれば、教育は変わっていける」

 

(文責:吉田)

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小中高、変化は不可避

昨日に続いて日経新聞の連載、「教育岩盤」からのご紹介です。

 

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デジタル技術の進展や新型コロナウイルス禍で社会が激変するなか、戦後間もなくできた教育制度では時代に対応できる人材の育成は難しいとの声が出ている。秋入学の小中高一貫校設立をめざす玉川学園(東京都町田市)の小原芳明理事長は「危機は変革の好機。何もしないと社会に取り残される」と指摘する。

 

玉川学園は9月入学(秋入学)の小中高一貫教育校を構想しておられます。

社会の変化とともに、学校も変化する必要があると、

小原氏はこんなふうにおっしゃっています。

 

「仕事のやり方が変われば大学の学びも変わる。

 大学に卒業生の半分を送り出す高校も変わらざるを得ない。

 そうすれば小中学校も変わる。

 高速通信規格の5Gが普及し遠隔学習がしやすくなれば

 登下校に費やす時間も減る。指導法も時間の使い方も変わる」

 

「その時代に教育体制はこのままでいいのか。

 ほとんどの子が高校まで進学する時代に6・3・3で区切る必要があるのか。

 我々の答えは修得主義への転換、年齢にとらわれない

 学年指定を取り入れた小中高一貫教育校創設と9月入学だ」

 

私自身、最近読んだ本にはいわゆる「履修主義」の問題点を

指摘する内容をよく見かけます。

確かに、現在の子どもたちの状況を見るにつけ、

履修主義を続けるのは難しい、修得主義に変えていく方がよい、

というご意見も一理あると感じることが多くあります。

 

小原氏はこのようにおっしゃいます。

 

「小中高を一つにし修得主義を導入すれば中・高の入試が不要になり、

 学習内容の組み替えや先取りもできる。

 時間を受験対策でなく基礎学力獲得に使える」

 

「9月入学は学年の切り替わりが約3カ月の夏休みになる。

 学校が教育内容を検証し質改善にじっくり取り組めることも長所だ。

 大学が9月~6月の学事暦になれば、長い夏休みに学生が

 インターン(就業体験)もできるし、海外大のサマースクールにも行ける。

 学びの機会が広がる」

 

社会の枠組も関係するとても大きな課題ですが、

こうやって立ち向かう私学が存在することを頼もしく思います。

小原氏のインタビューはこう締めくくられています。

 

「この改革は公立学校ではリスクが大きい。児童生徒数が少ない私学が実験すべきだ」

 

 

(文責:吉田)

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ブランド主義、改革の壁

以前もご紹介した、日経新聞の連載記事「教育岩盤」。

本日からしばらくの間、この連載からご紹介します。

どれも興味深い内容です。

 

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今回の記事はインタビュー形式。

日本電産・永守会長のご登場です。

 

永守氏は現在、京都先端科学大(KUAS)の経営も担っておられます。

同大の工学部新設では文部科学省の認可が遅れたのですが、

このことについて永守氏はこうおっしゃいます。

「産業界は公平公正な競争原理が働き、企業はどんどん改革を進められるが、

 大学は文部科学省が許認可権を握っている。

 審査の過程では重箱の隅をつつくような質問をされて苦労した」

 

そして、大学改革で最大の障壁は何かと問われ、こう答えておられます。

「根強いブランド主義だ。競争原理が働かない。

 友人の孫がKUASに入りたいと言ったら、親や祖父母がブランド校ではない

 と猛反対した。本人も何をしたいのか定まっていない」

 

永守氏の強みは、実業界で人材を多く見てきておられること。曰く、

「新卒者を1万人採用してきたが、ブランド大と非ブランド大で

 能力に何の関係もない。それなのに親はブランド大を目指して

 子どもを小学校から塾へ行かせ、夜遅くまで勉強させる。

 大学に入る時はエネルギーを使い果たしている。

 これでは創造力もコミュニケーション能力も育たず、グローバルで通用しない」

「採用する企業側もブランド主義だ。その方が安心だからだ。

 社会が求める学生を送り出す方向に、家庭も学生も企業も考えを変えるべきだ」

 

ここ日本でずっと受け継がれてきた価値観のひとつがこの学歴志向ではないか、

と私も感じます。

実際に社会に出ると、学歴はその他の個性や属性と同じ、

あるいはそれよりも優先度の劣る特徴のひとつでしかないにもかかわらず、

なぜかそれを崇拝する社会、価値観が根付いています。

これを変えるのは実に大きな労力が必要だろうと思います。

 

一方で、その価値観を逆手に取るように、

数年の改革によって学校の立ち位置を大きく変えた学校もみられます。

変わろうと強く思うこと、そしてその方向に歩みを進めることが、

ありたい姿を実現させてくれるのだとも思います。

 

貴校園はなりたい姿に近づいていますか。

できない理由を探すのではなく、できる方法を探すのです。

着実になりたい姿に近づけるよう、心から応援しております。

 

(文責:吉田)

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放課後の子供、地域で支える

放課後の子どもたちをどう支えるか、

は私学にとっても大きなテーマでしょう。

日経新聞より。

 

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全国の小学校に広がる「アフタースクール」は地域主体の活動だ。放課後の教室、校庭を使って学びや遊びの場を提供する。先駆者の平岩国泰さん(47)はNPO法人、放課後NPOアフタースクール(東京・文京)の代表理事自治体や企業と連携し、多彩なプログラムを各地に届ける。

 

この記事に登場する平岩さんは、17年前に長女が誕生。

その年、下校中の児童を狙った痛ましい事件が相次ぎました。

当時、普通の会社員だった平岩さんは、定休の平日を利用し、

週1回の個人ボランティアをされていたそうです。

近隣の学校にアフタースクールの提案をしても門前払いで、

初回企画は公民館で実現したとのことですが、

開催の前々日まで応募がゼロで、そこにある女性が現れ、

「張り紙を見て共感し、4人集めたわ」と…

 

2011年以降、東京や神奈川など20を超す公私立の小学校でアフタースクールの実績を重ねてきた。スポーツや音楽、料理などプログラムは500種類以上。「市民先生」と名付けた地域の人たちが講師で活躍する。21年度から愛知県の自治体と連携し公立学校へのノウハウ支援も始めた。

 

このNPO、約90人のスタッフの大半が20~30代で、

インターンシップの学生も増えているそうです。

学校が敬遠される職場と言われる中で、

この活動には人が集まっていることに、

人材募集のヒントもあるような気がします。

 

さて貴校園の放課後の状況はいかがでしょうか。

小学校であれば活動の場そのものをどうするか、

中高であれば部活動をはじめとする課外活動などなど、

正課の活動とともに経営課題になっていることも多いでしょう。

こういった取り組みを学んで、自校園の活動に活かすことができるといいですね。

 

(文責:吉田)

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公立初の小中高一貫 立川国際付属小、倍率30倍

公立でも小中高一貫校が誕生します。

日経新聞より、短い記事ですがご覧ください。

 

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東京都は1日、都立立川国際中等教育学校立川市)の付属小学校の一般入試の倍率が30.98倍になったと発表した。公立で全国初の小中高一貫校として2022年春に開校する。私立より学費が低く、語学に力を入れたカリキュラムが人気を集めたとみられる。

 

東京都によりますと、募集人員は男女とも29人の58人。

これに対し、倍率は男子31.59倍、女性30.38倍。

30倍…気が遠くなります。

記事には「都内の私立の小中高一貫校の多くは倍率が10倍未満」と

書かれていますが、他地域の私学関係者は

この数字ですらため息が出るかもしれませんね。

 

冒頭の文章にも書かれていますが、一番の理由は学費、でしょう。

見た目には私学同水準、あるいは近い水準の教育内容が安価に受けられる、

となれば人気を博するのはある意味当然です。

教育内容としては、

・小学1年から英語の授業

・韓国語や中国語などを学ぶ機会あり

・「考える」「表現する」を重視し、論理的な思考力の習得を目指す

・海外での活動もプログラムとして盛り込んでいる

といったところが記事に挙がっています。

 

公立校の本来の役割を考えれば、こういった特色校の設置には

少々懐疑的な気持ちになってしまうのですが、

世間の流れはそちらに向いているような気もします。

私学にとっては大きな脅威と言えるでしょう。

 

ただ、先進的な形は常に私学がチャレンジしてきたはずです。

よりよい教育の形を見つけ、実践していくのが私学の役割。

皆さん、めげずに頑張ってまいりましょう。

 

(文責:吉田)

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教科担任「中学教員活用を」

まずは本日開催予定の学校経営セミナーのご連絡です。

本年度は全回オンライン実施とさせていただきました本セミナー、

本日分が年度最終回となります。

すでにご参加の皆様には各種情報及び資料を送付させて

いただいておりますので、14時までにエントリーをお願いいたします。

お会いできるのを楽しみにしております。

 

さて本題。

文科省の予算要求に対する財務省の見解が掲載されていました。

私学で言えば、教学側の要求に対する経営側の見解、

と言い換えられるでしょうか。

 

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文部科学省が2022年度から公立小学校の高学年に本格導入する「教科担任制」について、財務省は1日、中学校の教員活用を求めた。小規模な中学校では教員1人当たりの授業時間が極端に少ないと指摘し、教員の定数増を目指す文科省をけん制した。

 

国の予算要求の話題自体も重要性が高いのですが、

今回この記事を採り上げた主たる目的は「授業時間数」にあります。

下のグラフを皆さんはどう捉えられますでしょうか。

 

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財務省は同日の財政制度等審議会財務相の諮問機関)の歳出改革部会で、小中学校の教員の年間授業時間数はそれぞれ747時間、615時間といずれも米国や英国、フランスよりも少ないと説明。中学校では教員当たりの1週間の平均授業数が18.2コマに対し、1学年1学級の中学では平均11.6コマと「極端に少ない」として、小中連携による教科担任制の実現を求めた。

小学校での英語必修化と異なり、教科担任制では年間の授業時間は増えないとも指摘した。学校内での教科担任の割り振りの工夫やオンラインを活用した学校間の連携などにも取り組めば、定員を増やさずに導入できる可能性があるとした。

 

授業のためには授業準備が必要ですので、月曜日から金曜日、

あるいは土曜日まで、毎日毎時間を目いっぱい授業で埋める、

などということは不可能です。

 

では実際、週何コマ持つことができるのか。

これは特に私学の場合、学校によって考え方に若干ながら差があり、

上限とされているコマ数がばらついているのが実情です。

 

ただ、上記平均値を拝見するに、諸外国と比べて少ない数値になっている、

というのは少々驚きでした。(ただしこれは公立校のデータかもしれません)

OECDなどの調査結果では、日本の教員は授業ではない事柄に

追われすぎていて、肝心の授業に時間を使えていないという状況が

見えていたと思いますので、これもそのひとつの現象なのかもしれません。

 

学校の先生方は本当に忙しい、と私自身も感じています。

ただ、その忙しさは業務量の過多のみではなく、

仕事の仕方、時間の使い方の不十分さも原因の一つになってはいないでしょうか。

本来使うべきところにしっかり時間を使えるように、

学校現場の時間の使い方を改めて見直してみる必要がありそうです。

 

(文責:吉田)

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黒髪指導 二審も「違法性なし」

すでにご承知の事案かと思いますが、採り上げておこうと思います。

日経新聞より。

 

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茶色っぽい髪を黒く染めるよう教諭らに強要されて不登校になったとして、大阪府羽曳野市の府立高校の元女子生徒(22)が府に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が(10月)28日、大阪高裁であった。本多久美子裁判長は髪の染色を禁じる校則や指導の違法性を認めなかった一審・大阪地裁の判決を支持し、元生徒側の控訴を棄却した。

 

本件裁判においては、一審・大阪地裁の判決で、

元生徒が不登校になった後の学校の対応について府に賠償を命じた一方で、

校則について「社会通念に照らして合理的」などと判断していました。

これを受けて元生徒側が控訴したものですが、

控訴審判決においても、学校教育では「個別的、集団的な実情に応じて

多様な教育指導が許容されるために広範な裁量が認められる」と指摘し、

府立高の校則や頭髪指導は「裁量の範囲を逸脱しない」と結論づけました。

 

ただ、この裁判が世間に与えた影響は決して小さくありません。

文部科学省は今年6月、校則を時代に合わせて見直すよう求める通知を発出、

改定の動きが出始めていますし、生徒が主導するケースもあります。

 

埼玉県では、高校など県立学校の実に9割が、

過去3年間に服装規定を中心に校則を見直していたそうです。

また広島市の私立安田女子中高は2021年度から、

原則禁止だったスマートフォンの持ち込みを認めるよう校則を変更しましたが、

これは生徒有志が全校アンケートで募った意見をもとに教員と協議を重ね、

学習や緊急時の連絡など目的を限って容認したものです。

一方で、熊本市が2020年に実施したアンケートでは、

高校生の約4割が「校則の中に必要ないと思うものがある」と回答していて、

現在も生徒を細かく縛るルールは多くの学校で残っているようです。

 

グローバル化性的少数者への配慮など社会の意識が変わる中、

校則はどうあるべきか、議論が求められていると記事も指摘しています。

貴校園の校則はいかがでしょうか。

ルールが時代とともに変わるのはむしろ自然なことです。

ぜひこの機会に見直してみてはいかがでしょうか。

 

(文責:吉田)

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