寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

賃金フラット化、着実に進む

人生100年時代。定年延長。

高齢者雇用に関する話題も多くなってきました。

さて学校法人での制度設計はどのように進めればいいのか。

この記事を読んで考えてみてはいかがでしょうか。

日経新聞より。

 

www.nikkei.com

(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)

 

日本では雇い主と労働者の間で、エドワード・ラジア米スタンフォード大教授が提唱するインセンティブ(誘因)契約に相当する賃金体系が広く成立していると考えられる。雇い主が労働者の努力水準を観察できない場合、若年時には生産性以下の賃金、事後的に生産性以上の賃金を受け取る長期的なカーブをつくることにより、労働者に努力を継続するインセンティブを与えるものだ。

この場合、高年齢者の雇用確保を定年年齢の引き上げで進めるとすれば、生産性を上回る賃金を支払う期間が延長されるので、企業の負担増に直結しうる。負担緩和の一つの方策は、賃金カーブのフラット化(年齢に伴う賃金の上がり方を緩やかにする)だ。

 

筆者はこのような前提を基に、

「高年齢者の雇用期間延長に伴いフラット化が進むのか」

という点を研究されたようです。

下のグラフ1は、高年齢者比率が高い事業所をグループA、

低い事業所をグループBに分け、

賃金カーブの平均的な傾きがどの程度フラット化したかを確認した結果です。

これによれば、30~60代のすべての年代でAはBよりフラット化が進み、

特に50代での差が大きくなっていますね。

高齢者雇用が進めば、賃金カーブはフラット化せざるを得ない、

というふうに言ってもいいのかもしれません。

 

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そして、年齢別の時給水準の変化がどのように進展しているのか、

という点についても結果が記されています。

図2で示したように、ピークの低下(②)は95~05年に起き、ピーク以降の低下は期間を通じて徐々に進んでいる(③)。入職時賃金の上昇(①)率と中高年の賃金低下率はほぼ等しいが、金額では後者の方が大きい。

だが企業側からみると、中高年以上の年齢層に支払う賃金総額のウエートは上昇を続けている。大卒男性の賃金では、50代のシェアは95年の22%から15年に30%を超え、60代も同期間に4%から6%に拡大した。

 

これらの結果から、筆者は次のような提言をされています。

少し長くなりますが引用させていただきます。

 

賃金カーブのフラット化は何を意味するのか。将来の賃金上昇が見込みにくくなるため、若年のうちから、より高水準の賃金を得るための転職が増えることが予想される。これを企業側からみると、転職可能性が高まることで若年層への人的投資意欲が下がる。だが若年層で転職に向けてコストを負担し自己の能力開発に投資するケースが増えると考えれば、人的投資の費用負担が企業から労働者に移っていく可能性がある。

賃金カーブのフラット化の進展を避けるのは難しいが、定年が近づいた年齢層の生産性を高め、高年齢者の転職市場を厚くすることは重要だ。業績や評価、専門的なスキルや経験を有する、あるいはマネジメント能力が高い人材は市場でも高く評価される。こうした人材の層を厚くするには、企業の内外様々な形での人的投資が不可欠だ。

年功賃金制度が緩やかになるとともに、補完的に機能してきた長期雇用制度が弱まり、若年層の離職率が上昇すれば、職場内訓練(OJT)に依拠した日本型雇用慣行も変化を迫られる。他方、生産性の高い人材の育成には、学校教育終了後も若年から中高年まで継続した人的投資が不可欠だ。

 

学校法人においても、将来を見据えた賃金設計がいよいよ必要だ、

というケースは決して少なくないと思います。

年齢で見た場合のフラット化はある程度やむを得ない中で、

優秀な人材の採用と雇用維持を目指すためには、

そのような人材を「育てる」という観点が欠かせないのではないでしょうか。 

 

(文責:吉田)

www.ysmc.co.jp