先日の日経新聞に興味深い記事が掲載されました。
(有料会員限定記事となっております。ご了承ください)
この記事の筆者はすべての社会福祉法人の財務諸表をダウンロードし
分析されたようです。
なかなかの作業量だったと思いますが、その作業量の分だけ、
正確な情報が得られているように感じます。
集計した1万9855法人の16年度の収入は10兆円、経常増減差額は3484億円、平均経常利益率は3.5%だった。社福の業績を考察する場合、全国展開して事業規模が格段に大きい済生会(収入6318億円、経常利益率マイナス0.9%)と聖隷福祉事業団(同1098億円、4.3%)を除いた数値も重要だ。この2法人を除く平均経常利益率は社福全体で3.8%、複合体も表の2.2%でなく3.0%になる。
社会福祉法人では、学校法人でいうところの「経常収支差額」は
平均すると収入の4%弱となっているようですね。
ちなみに、高等学校法人の平均値は2%。2倍近い差です。
ただ一方で、こんな指摘がなされてもいます。
社福の財務構造を理解するには、事業種類による差に加えて地域別、さらには同じ地域や事業種類の中でも大きな違いがあることを知る必要がある。これは社福の利益率と純金融資産の格差の理由として、社福理事長の経営姿勢の違いが大きく影響していることを示唆している。
統計を読む際に気を付けたいことのひとつに、平均に踊らされない、
という点があります。
平均値は確かに全体像のある側面を映し出しますが、
それはあくまでも平均であり、例えばばらつきは示しません。
上記指摘には特段のカテゴリによらないばらつきがあることが述べられ、
そのことは「経営者の経営姿勢」によるのではないか、
との推論がなされています。
なるほど、確かに同じ規模、同じ地域にある学校法人であっても、
その業績には大きな差異があるのがむしろ一般的でしょう。
何かと平均値に照らして自法人の業績を考えてしまいがちですが、
やはり比べるべきは他法人や平均値ではなく、
「自らのあるべき姿」に違いないですよね。
なお、本記事の分析で少々残念なのは、単年度の収支差額が大きければ
投資余力が大きいという論調で述べられている点です。
経営者による経営姿勢が業績に影響を及ぼすとしても、
例えばその経営者交代が近年であったのであれば、
過去からの蓄積が少なく投資余力がまだまだ小さい、
というケースも数多くあるものと思われます。
特に社会福祉法人の経営はまだ成熟したと言えるほど
年月が経っていませんから、追加的支出を行えるかどうかは
それこそ各事業体によりけり、だと思われます。ご留意ください。
(文責:吉田)