本ブログでは過去に何度か取り上げていますが、8月29日に中教審の学校における働き方改革特別部会が「学校における働き方改革に係る緊急提言」を発表しました。
皆さんご存知かと思いますが、以下の3項目が緊急提言として挙げられています。
①校長及び教育委員会は学校において「勤務時間」を意識した働き方を進めること
②全ての教育関係者が学校・教職員の業務改善の取組を強く推進していくこと
③国として持続可能な勤務環境整備のための支援を充実させること
特に、①の勤務時間については、教員の出退勤時刻の管理ができている学校が非常に少ないことを踏まえ、「自己申告方式ではなく,ICTやタイムカードなど勤務時間を客観的に把握し,集計するシステムが直ちに構築されるよう努めること。」と明示しており、早急な対応が求められます。
「労働時間管理」という概念のない世界で過ごしてこられた教員の方々からは少なからず抵抗があるようですが、労働時間の管理を徹底することはとても重要なことです。
以下の記事では、その理由がわかりやすく挙げられています。
■理由1:義務である
第1に、緊急提言でも「勤務時間管理は、労働法制上、校長や服務監督権者である教育委員会に求められている責務である」と書かれているとおりである。厚労省からも「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日策定)」が出ている。
わずか4ページなので、ぜひご一読いただきたい。
使用者が現認できない場合は、「タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること」が原則である。
■理由2:振り返りのため
2つ目の理由は、働き方改革や業務改善を進めるには、まず、現状をしっかり把握して、反省する必要があるからである。教員の大好きな〝リフレクション〟は、働き方改革にも必要である。
例えば、学校でテストを1度も行わずに学力向上の有効な手立てを立案できるだろうか。あるいは、体重計に乗らずに、ダイエットしようとする人がいるだろうか。正確な記録と振り返りがないとは、そういうことと同じだ。
確かに、タイムカード等を導入したからといって、劇的に勤務時間の削減になるとは限らない。実際、連合総研の27年の調査によると、タイムカード等の機器で出退勤時刻管理を行っているという教員と、そうでないという教員との間で、週の労働時間に有意差は確認されなかった。
少し考えてみれば当たり前の話だが、時間の把握だけでは、仕事を減らすことにはならない。が、同時に言えることは、時間の把握もないままでは、今が危機的なのか、何を見直すべきかなども見えてこない。
■理由3:自分と家族を守るため
3つ目の理由として、仮に病気や最悪、過労死等となった場合、公務災害として認められるかどうかという点で、勤務時間の記録がないと、不利になる。
裁判になって何年も闘って勝てるかどうかという事案も多いのは、正確な記録がないためである。記録がないと、遺族の方には、教材や文書などの成果物を集めたり、関係者から証言をとったりする苦労がものすごくかかってしまう。その負担もあって、公務災害の訴えを断念する(いわゆる泣き寝入りする)例も多いと推察される。
どの理由も当然重要ですが、私は特に「理由2」が重要であると感じています。
記事中にもありますが、労働時間を管理するだけでは長時間労働が改善されないことは明白です。PDCAサイクルをしっかりと回すことが求められます。
その理解がなければ、労働時間管理はあまり意味のないものになってしまいます。
緊急提言を受けて各学校は対応に追われることと思いますが、ただ労働時間を管理するだけではなく、教員の方々に目的と理由をしっかりと理解してもらうことが何より重要です。
(文責:木村)