最近の若者は自己肯定感が低いとよく言われます。
国立青少年教育振興機構が平成27年に行った「高校生の生活と意識に関する調査」においても、日本の高校生の自己肯定感は他国と比較し極めて低いという結果が出ています。
自己肯定感とは「自分の良いところも悪いところも含め、全てを受け止められる前向きな感情」のことですが、自己肯定感が弱いと、劣等感を抱きやすく、また自己嫌悪に陥りやすく、つまり「へこたれやすい」人であるということになります。
若者には無限の可能性がありますので、何事にものびのびと楽しみながらチャレンジしてほしいのですが、日々の生活に息苦しさを感じているのでしょうか・・・。とても残念なことです。
さて、どうすれば自己肯定感を高めることができるのでしょうか。
国立青少年教育振興機構が、20~60代の5,000人の男女を対象に、子ども時代の体験と現在の資質がどう関係しているかを調査しました。
http://www.niye.go.jp/kanri/upload/editor/117/File/290425gaiyou.pdf
調査結果の概要を見てみましょう。
- 「家族行事」(家庭)、「友だちとの外遊び」(地域)、「委員会活動・部活動」(学校)を多くしていた人ほど、社会を生き抜く資質・能力が高い。
- 「お手伝いや家族行事といった体験が多く、家族との愛情や絆を強く感じていた人」や「外遊びを多くし、遊びに熱中していた人」ほど、社会を生き抜く資質や能力が高い。
- 親や先生、近所の人から「褒められた経験」が多かった人は、社会を生き抜く資質・能力が高い。そのうち、「厳しく叱られた経験」が多かった人はより社会を生き抜く資質・能力が高い傾向がみられる。
- 「家族との愛情・絆を強く感じていた人」ほど結婚願望や子育て願望が強く、「遊びの熱中度が高かった人」ほど自己啓発やボランティア活動を行っている人が多い。
- 子どもの頃、家庭の教育的・経済的条件に恵まれなかった人でも、「親や近所の人に厳しく叱られた経験が少なく、褒められた経験」が多かった人、「家族でスポーツしたり自然の中で遊んだこと」や「友だちと外遊びをしたこと」が多かった人は自己肯定感が高い。
- へこたれない力が高い人ほど、恋人に理由もなく突然ふられた時は「落ち込んだが、これも人生の肥やしと思った」、スポーツ競技で補欠に回ってしまったときは「監督を見返してやろうと思い、再び練習に打ち込んだ」など、物事を前向きにとらえ、あきらめずにがんばろうとする意識が高い。
ちなみに、社会を生き抜く資質・能力として、①意欲、②コミュニケーション力、③自己肯定感、④へこたれない力 の4つが挙げられています。
さて、ここで結果2について少し詳しく見て行きましょう。
子どもの頃に先生に褒められた・叱られた経験と現在の自己肯定感の関係を検証した結果、それぞれのケースにおける現在の自己肯定感の高さは以下のようになっています。
- 褒められた回数は多く、叱られた回数も多い = 50.3%
- 褒められた回数は多く、叱られた回数は少ない = 50.0%
- 褒められた回数は少なく、叱られた回数は多い = 26.2%
- 褒められた回数は少なく、叱られた回数も少ない = 16.4%
上位の二つはほぼ同じ数値になっていますが、やはり先生に褒められると自己肯定感は高まるようですね。
一方、褒められた回数が少ないと自己肯定感が低くなることは理解できますが、叱られた回数が少ない方がより自己肯定感は低くなる傾向にあるようです。
褒められようが叱られようが、子どもにとっては先生に自分のことをいっぱい見て欲しいという思いがあるのでしょう。
つまり、褒められも叱られもしない子どもは、それだけで疎外感を抱いてしまっているのかもしれませんね。
先生が全ての生徒の様子に目を行き届かせるのは大変なことだと思いますが、子ども達の自己肯定感を高めてへこたれない大人になってもらうためには、保護者の日々の接し方はもちろんですが、先生の子ども達への細やかな気配りや目配りも重要な要素であることを調査から感じました。
(文責:木村)