寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

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私立高等学校 入学志願動向

日本私立学校振興・共済事業団から、気になるデータが発表されました。

 

平成28(2 0 1 6)年度 私立高等学校 入学志願動向 日本私立学校振興・共済事業団

 

同事業団が実施している「学校法人等基礎調査」から、私立高等学校の入学者等に関する項目のデータを集計したもの、との説明がなされています。

私立高校の経営環境を知るには有用な資料だと感じましたので、概要を押さえておくことにしましょう。

 

まずは「私立高等学校の概況」について。

(1)学校数

集計学校数: 1,289 校(集計率 97.6%/前年度比 4 校増)

(2)入学定員

入学定員: 411,310 人(前年度比 1,249 人(0.3%)増)

(3)入学者等

前年度比で志願者 0.9%増、受験者 0.9%増、合格者 0.6%増、入学者 1.3%増

(4)入学定員充足率

入学定員充足率: 85.09%(前年度比 0.88 ポイント増)

入学定員充足率が 100%未満の学校数: 1,289 校中 902 校(70.0%/1.4ポイント減)

50%未満の学校数: 149 校(11.6%/前年度同率)

※平成 14 年度と比較すると、集計学校数は 15 校増加したが、入学定員充足率が 50%未満の学校数は 146 校から 149 校と微増であった。

(5)学校別入学定員充足率

前年度に入学定員を充足していた学校のうち、平成 28 年度に入学定員充足率が上昇した学校は 75 校、下降した学校は157 校。

前年度に入学定員が未充足の学校では、平成 28 年度に入学定員充足率が上昇した学校は 323 校、下降した学校は 234 校。

前年度に入学定員を充足していたが平成 28 年度に未充足となった学校は 85 校。

前年度に入学定員が未充足であったが平成 28 年度に入学定員を充足した学校は 102校。

まずはここまで。

(3)を見ると、全国的に見た場合には、私学への志願者・入学者ともに増えているとの結果のように見えますが、そもそも本調査の集計対象の学校数が増えていますので、必ずしもそうとも言えない、という可能性が残ります。

ただ、各数値を校数で除して平均値を求めてみると、入学者数については確実に増えているようです。

ところが、入学定員を満たしていない学校の数は全体の7割に上っています。

7割とは大変な高率です。

これでも前年より減っているとの結果ですので、状況は深刻です。 

 

上記の結果をジャンル別に細かく見てみると、こんなふうになります。

(6)都道府県別の動向

○平成 28 年度の動向
・志願倍率が最も高いのは群馬県で、以下、岡山県茨城県大分県
・入学定員充足率が最も高いのは岡山県で、以下、埼玉県、新潟県

○5 ヵ年の推移:平成 24 年度と 28 年度の志願倍率、入学定員充足率の比較
・志願倍率と入学定員充足率がともに上昇しているのは、22 都府県。
・志願倍率が特に上昇しているのは、大分県岡山県・神奈川県で、いずれも 0.6 ポイント以上上昇。一方、群馬県は約 1.3 ポイント下降。
・入学定員充足率が特に上昇しているのは、高知県沖縄県・石川県・長野県で、いずれも 7 ポイント以上上昇している。一方、大阪府は約 7 ポイント下降。

(7)男子校・女子校・共学校別の動向

○平成 28 年度の動向
・志願倍率が最も高いのは、共学校で、以下、男子校、女子校。
・合格率が最も高いのは、女子校で、以下、共学校、男子校。
入学定員充足率が最も高いのは、共学校で、以下、男子校、女子校。
・上記 3 つ(志願倍率、合格率、入学定員充足率)について、男子校・女子校・共学校別の順番は、平成 14 年度以降変化がみられない。
・歩留率が最も高いのは、男子校で、以下、女子校、共学校。この順番は、平成 26 年度に男子校と女子校が入れ替わって以降変わっていない。

○平成 14 年度からの 15 年間の推移
・志願倍率は、いずれの種別も下降傾向が続いている。
・合格率は、女子校は 95%前後、共学校は 90%前後、男子校は 85%前後で推移している。
・歩留率は、男子校は上昇傾向にあり、共学校は 30%前後で 15 年間ほぼ変わらない。
・集計学校数は、男子校が 57 校、女子校が 93 校減少したのに対し、共学校は 165 校増加している。

私学の存在感は、各自治体によって大きく異なるものと思われます。

本資料p.12~13には都道府県別の集計結果が出ていますが、 志願倍率や歩留率にはかなり開きがあります。

ちなみに、定員充足率は埼玉県が107.51%であるのに対し、教育先進県と言われる秋田県で48.02%となっています。

御校の所在する自治体についてはいかがでしょうか。

 

また、男女別というカテゴリでは女子校が苦戦模様になっているようです。

ここ15年程度で、男子校あるいは女子校から共学校へと変化するケースもかなり多く見られ、男子校も女子校も学校数は大幅に減ってきているにもかかわらず、定員充足率はそれほど変わっていないわけですから、志願者数の減り方のすさまじさが分かります(事実、15年で半減しています)。

一方で、歩留率は男子校が高くなっており、その魅力の高さを示しているようにも思えます。

 

そして、今後の学校規模を考えるうえで参考になりそうなのがこちらです。

(8)規模別の動向

○平成 28 年度の動向
・志願倍率が最も高いのは、入学定員が 800 人以上 1,000 人未満の区分で、以下、400人以上 500 人未満、600 人以上 800 人未満、1,000 人以上となっている。
・入学定員充足率が最も高いのは、300 人以上 400 人未満の学校で、以下、200 人以上 300人未満、400 人以上 500 人未満の区分となっている。
・志願倍率は入学定員規模が大きくなると高くなる傾向にあるが、入学定員充足率は入学定員 300 人以上 400 人未満が最も高い。このように志願倍率の高い入学定員規模別区分と、入学定員充足率の高い入学定員規模別区分とは必ずしも一致していない。

 「定員」が教育上、さらには経営上も適正規模を示すとすれば、そこからの乖離は極力避けねばなりません。

現状、定員充足率が85%を超えているのは入学定員200~500人の範囲となっています。学校規模を想定する際のひとつの目安になるのではないでしょうか。

 

なお、この資料の末尾付近(p.37~44)には各都道府県別の「15歳人口の推移と入学者動向」を示した表とグラフが掲載されています。傾向が一目でつかめますので是非ご覧になってください。

 

そしてさらに気になるデータがp.45に。

都道府県別の15歳人口の過去~未来にかけての推移実績・予測です。

全国的には、ここからたった3年で15歳人口は5%減ります。

ちなみに、平成28年度までの間、5%減少するのにかかった時間は11年です(平成17年度が平成28年度の5%増しだったということ)。

急速な年少人口の減少がやってくる中で、各校の規模設定はより厳格さが求められることになります。

 

(文責:吉田)

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