寝ても覚めても学校のこと。~学校経営の経営課題(人事・財務・募集・施設などなど)について考えるブログ~

大阪の学校経営コンサル会社/株式会社ワイズコンサルティングが、学校経営に関する情報を収集し発信するブログです。

「長時間労働」に関するアンケート調査

昨今話題の「長時間労働問題」については当ブログでもよく取り上げていますが、東京商工リサーチが全国1万2,519社を対象に長時間労働に関するアンケートを実施しました。

 

www.tsr-net.co.jp

 

まず、残業の実態についてです。

 

残業の有無について、「恒常的にある」が7,095社(構成比57.3%)で6割近くを占めた。次いで、「時々ある」が4,504社(同36.4%)、「ない」と「させない」は764社(同6.1%)と1割未満にとどまった。
 「残業がある」は、全体の93.8%にのぼり、規模を問わずほとんどの企業で残業が行われている実態が浮き彫りになった。
 企業規模別では、大企業(2,898社)では「恒常的にある」が2,021社(構成比69.7%)、「時々ある」が825社(同28.4%)で、「残業がある」は2,846社(同98.2%)に及んだ。
 中小企業等(9,465社)は、「恒常的にある」が5,074社(構成比53.6%)、「時々ある」が3,679社(同38.8%)で、「残業がある」は8,753社(同92.4%)で、中小企業等の方が残業のある比率は5.8ポイント低かった。

 

具体的にどの程度の残業が発生しているのかまではわかりませんが、ほとんどの企業では残業自体が当たり前になっているようです。

 

では、どのような理由で残業が恒常的に発生してしまっているのでしょうか。

 

残業の理由は、トップが「取引先への納期や発注量に対応するため」が6,170(構成比37.6%)で約4割を占めた。次いで、「仕事量に対して人手が不足している」が4,058(同24.7%)、「仕事量に対して時間が不足している」が3,463(同21.1%)、「日常的なことなので特に理由はない」が1,213(同7.3%)、「不明」が68(同0.4%)の順。取引先との関係で避けがたい状態が浮き彫りとなった。
 「その他」では、「突発的な事態への対応」(人材派遣業)、「季節業務対応」(会計事務所)、「動物を扱う仕事のため」(酪農業)、「現場作業や顧客への対応のため」(建設業)など、自社都合では避けられない事情もある。
 また、「実質的に残業代が給料の一部になっている」(鍛造業)など、残業代が生活費に織り込まれているケースも見受けられ、賃金引上げとの兼ね合いに広がっている。
 大企業では、「仕事量に対して人手が不足している」は1,254(構成比30.0%)、「取引先への納期や発注量に対応するため」が1,202(同28.8%)、「仕事量に対して時間が不足している」が1,032(同24.7%)で、この3項目が上位に並んだ。
 中小企業等では、最多が「取引先への納期や発注量に対応するため」の4,968(同40.6%)。次いで、「仕事量に対して人手が不足している」が2,804(同22.9%)、「仕事量に対して時間が不足している」が2,431(同19.8%)で、上位を占めた。中小企業等は、取引先との関係による理由が大企業を11.8ポイント上回り、納期(工期)を守り、受注先との取引関係を維持するために残業が増える構造的な課題が浮かび上がっている。

 

企業は顧客や取引先があって成り立ちますから、1位の取引先対応については自社の努力だけでは確かに限界がありますね。また、2位の人手不足については、昨今はどの業界の企業にとっても非常に悩ましい問題です。先日、ある外食企業の経営者の方とお話しする機会があったのですが、現場(店舗)の人手不足はますます深刻化していると仰っておられました。

 

残業が恒常的に発生することには構造的な問題が大きく絡んでいるようですが、だからといってこのまま放置しておくわけにはいきません。

79.7%の企業が残業を減らす何らかの努力を行っていると回答しており、主な取り組みとして以下が挙げられています。

 

残業削減に取り組んでいる施策は、トップは「仕事の効率向上のための指導」が7,123(構成比37.8%)で約4割を占めた。次いで、「仕事の実態に合わせた人員配置の見直し」が5,621(同29.8%)、「ノー残業デーの設定」が2,981(同15.8%)、「勤務体系や役職等の変更」が1,545(同8.2%)、「労働組合等との協定見直し」が356(同1.8%)、「削減度合いに応じたインセンティブ支給」が171(同0.9%)の順。効率化の施策が中心だった。
 規模別では、「仕事の効率向上のための指導」が(大企業1,759・構成比34.7%、中小企業等5,364・構成比38.9%)、 「仕事の実態に合わせた人員配置の見直し」が(同1,300・同25.6%、同4,321・同31.3%)、「ノー残業デーの設定」が(同1,253・同24.7%、同1,728・同12.5% )と、上位は規模に関係なく同じ回答が並んだ。
 しかし、「ノー残業デーの設定」は規模により構成比に約2倍の開きがあり、人手不足で余裕の乏しい中小企業等ではノー残業デーの設定は困難な実態を示している。

 

上位には、業務効率化に関する指導と人員の適正配置が挙げられています。

ここで重要なのは、現状の把握とあるべき姿の設定をしていないと、どちらも大きな成果は期待できないということです。

組織の業務効率を図ろうにも、現状のどこに問題があって、どうすれば理想の姿に近づけることができるかが明確になっていないと、見当違いな取り組みによって組織にさらなる混乱をもたらしかねませんし、残業時間がより増加してしまうおそれもあります。

また、そのような状況でノー残業を導入すれば、見えない残業=持ち帰り残業が増えることは目に見えています。

 

これらは企業だけでなく、学校や幼稚園においても同じことが言えるのではないでしょうか。

現在地を知る(職場の現状を正確に把握する)、目的地を設定する(あるべき姿を明確にする)、まずはこの二つの作業をしなければ、何に取り組むべきかが明確になりませんし、何も改善されないままいたずらに時間だけが過ぎていくかも知れません。

 

管理職以上の方々がいかに組織全体を俯瞰的に観察できるか、また、固定概念を取り払っていかにあるべき姿を明確にすることができるか、これらが重要ではないかと感じます。

 

(文責:木村)

 

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