このブログに税理士としての活動を書くことはめったにないのですが、そんな私も現在は確定申告に関する業務がかなりのウェイトを占めています。
学校関係各位はそれほど身近ではないかもしれませんが、所得税の確定申告の締め切りは毎年3月15日。
今年も例にもれず、あと半月ほどが会計事務所の最繁忙期ということになります。
私自身、学校法人の経営支援という最大の役割があると自負しておりますので、確定申告をはじめ税理士としての業務は積極的には受託していないのですが、それでもこの時期は「面倒なので代わりによろしく」という納税者の方も何名かいらっしゃいます。
もちろんそのお手伝いをさせていただくわけですが、私自身の開業からそれほど時間が経っていないこともあり、「初めてお手伝いさせていただくお客様」が大きな割合を占めます。
そしてその中には、「これまで何も分からないまま、(別の)専門家に任せっきりだった」という方もいらっしゃいます。つまり、ご自身による「申告」でありながら、その内容をまったく把握しておられないケースもある、ということです(本来はあり得ないのですが…)。
その原因の一つはご自身がそれを知ろうとしなかった、という点であろうと思います。
しかし私がそれ以上に気になるのは、手伝った専門家が内容についてご本人に説明責任を果たしていない、というところです。
専門家はその道のプロとして存在していますから、任せておけばそれなりのことをやるのは当たり前。確定申告を任せれば、申告書が出来上がるのは当然の話です。
しかし、申告書のポイントがどこであって、どういう経緯でその税額になったのか、あるいは解釈がいくつか存在するような事項については納税者にご説明したうえでご本人に判断していただく、ということは最低限必要です。
ところが、今回実施した確定申告の中には、以前の確定申告の内容をまったく把握しておられず、その結果、取り返しのつかない、誤った内容を申告しておられるケースも見られます。
そのような実例にぶつかるのは今回が初めてではなく、これまでも散々経験してきたところではあるのですが、そのたびに納税者さんにその説明をし、「こんなことになってしまってお気の毒です」との気持ちがわいてきます。
所得税の確定申告では特にこのようなことがよく起きるのですが、その原因の多くは「税理士以外」の関与によるものが多く見られます。
世の中には「確定申告くらい手伝えるよ」という方がたくさんいらっしゃって、小遣い稼ぎとばかりに手数料を取っておられるケースもあるようです。
(ちなみに、お金を取ろうが取るまいが税理士法違反なのですが)
そして、すでに終わった確定申告の内容が誤っていたばっかりに、本年度の申告でも無駄な税金を納めざるを得なくなるケースもあります。
こういう方に出会うと、本当にかわいそうになってしまいます。。。
税理士は税金のプロ。
そして、学校は教育のプロですよね。
プロと呼ばれる人たちは、そのことに精通していることはもちろん必要ですが、それ以上に「信頼して下さった方への誠意」が必要ではないか、と思います。
その誠意は「耳障りのいいことを言う」ことでは決してなく、むしろ「耳の痛いことであっても相手のためには臆せず、丁寧に伝える」ことこそが重要なのではないでしょうか。
今回の確定申告において初めて手伝った方の中には、過去の申告において脱税と言えなくない行為をされていた方もいらっしゃいました。
その方ご自身には悪気がなくとも、事実としてそのような状態になっていることは自覚してもらわねばなりません。
「これは経費としては認められません」
「もし経費にして申告されるのであれば、弊所は申告書の作成をお手伝いすることはできません」
そう伝えることは本当にしんどいです。
処理はしたものの、報酬もいただけませんし…
ですが、そこをなし崩しにはできないのもまた、プロとして当然のことだと思います。
ちなみに、そんな話をさせていただいた方が今回の申告で複数いらっしゃったのですが、ご本人からの反応は様々でした。
「それなら他に頼むわ」「じゃあ自分でやるわ」というお応えが最もオーソドックス?なのですが、中に
「今までがずさんだったことが今回初めて分かりました。今回はおっしゃる通りの内容で申告します。最後までよろしくお願いします」
とおっしゃって下さった方がいらっしゃいました。
こうなると俄然、私は燃えます(笑)
納税者と税理士の間に、強い信頼関係が芽生えた瞬間、と言ってもいいかもしれません。
プロフェッショナルとしてどう立ち居ふるまうか。
そして、コンプライアンスとどう向き合うか。
この大きな2つのテーマは、学校経営と決して無関係ではない、いやむしろ深く共通する内容ではないかと思い、本日のブログにしたためた次第です。
私学の皆さんはどうお考えになりますでしょうか。
(文責:吉田)