新年が明けて早ひと月が経ちます。
あちこちの幼稚園、保育園では生活発表会が行われていますね。
調べてみたものの、生活発表会の正式な定義は見当たらなかったので、Wikipediaにお世話になります。
生活発表会(せいかつはっぴょうかい)とは、就学前教育の幼稚園や保育園などで行われている行事の一つ。主に12月や3月の学期末に実施されており、園児は歌や演劇、またはダンスなどで施設での教育成果を披露することが狙い。
なるほど、その名の通り、生活発表会というのは「園での生活に関する成果発表」なんですね。
さて、あちこちの園ではどんな発表会がなされているのでしょうか。
私が関わっている幼稚園や保育園では、まさにその名に相応しく、園で学んだことが発揮されるイベントにしようと、先生達が身を粉にしてその行事を取り仕切っておられます。
おそらく、どの園でも同じように、園挙げて生活発表会の目的を達するために力を注がれていることでしょう。
ところが昨今、生活発表会をはじめとするいろいろな行事において、園が目的とするところと保護者のそれとが一致しなかったり、あるいは目的は一致していても手段が異なっていたり…ということが起こっているようです。
正直なところ、園が実施する内容はその道のプロとしての内容ですから、そこに親御さんがとやかく言うのは筋違いだろう、という想いが私にはあります。
ただ一方で、そのことに胡座をかいてしまうと、なぜその行事を行うのか、その行事で何を狙っているのか、といった根本が、園の教職員さんにも共有されぬまま行事が実施され、数年が経つ頃にはまるで惰性のように行事が行われる…なんてことにもなりかねません。
生活発表会は本来どうあるべきか。
その他の行事は、何を目的に実施されているのか。
その行事を行うこと自体が目的化していないだろうか。
そのことを、貴園なり(あるいは御校なり)に考えてみることはとても大切なことのように思います。
もうひとつ、行事に関して特に私が強く感じているのは「撮影」という事象についてです。
ある園の生活発表会で、保護者さんからクレームとも言えそうな、こんな意見が寄せられていることを耳にしました。
「園は保護者の撮影する権利を分かっていない」
聞けば、生活発表会で我が子の撮影をするためのスペースが限定されていることに腹を立てた親御さんが、こんな意見を寄せられたそうです。
撮影不可というわけではなく、その場所を限定しただけでこのような意見が寄せられるとは…私は驚きを通り越してしまいました。
映像を保存しておくこと、大人になったときにDVDで見られることがそこまで重要なことだという認識が、子供を持っていない私には十分理解できていないようです。
園はその意図をこう説明しています。
「せっかくのお子様の晴れ姿を、レンズを通してだけではなく、ご自身の目にも焼き付けていただきたいのです」
「他のご家族にも発表会を楽しんでいただくため、最低限のルールとして決めさせていただきました」
生活発表会では子供の権利こそ尊重されるべきで、保護者のそれはあくまで公共の福祉とのバランスを取るべきでしょう。
その意味で、このような発信ができる園は素敵だなあと思います。
このような悩みをお持ちの園はここだけではないはずです。
自園の教育・保育内容に「根拠」と「自負」の両方を持つこと。
そしてそのことを保護者の皆さんに丁寧かつ伝わるように伝えること。
これからの幼稚園や保育園には、そんなことが求められるのではないかな、と感じた一件でした。
(文責:吉田)